〜No.3〜
空と別れてから小太郎と太郎はレストランにいた。
「お待たせいたしました。チョコスイーツパフェでございます」
注文したパフェが店員の声と共にやってきた。
食べなくても美味しいとわかるそのパフェに小太郎は目を輝かせた。
「うまそー!!いただきます!!」
パチンっと手を当て、スプーンを手に取った。
柔らかすぎず硬すぎずという絶妙な食感が小太郎の舌を刺激した。
「んーっ!!!」と美味しさのあまり悶絶する小太郎を見た太郎は目を細めた。
太郎が注文したステーキも到着し、太郎も口にした。しかし、
「うん、うまい」と淡々と食べている。
それにムッとした小太郎は太郎を軽く睨んだ。
「ちょっと兄ちゃん。ここの店高いんだからね?ちゃんと味わって食べてよ」
「いや美味いよ?美味いけどさ、ほとんどのリアクションお前が奪ってるからな?」
「被っててもいいから喜んで!味わって!!」
強引にパフェを太郎の口に押し込んだ。
最初は喉に詰まっていたがなんとか飲み込んだ。
「で?どう?」
返答を待っていると頭を叩かれた。
「痛!?兄ちゃん何するの!?」
思わず大声を出してしまい、周りの注目を浴びてしまった。
小太郎は立ち上がり、全員に謝った。
座ると太郎が肩を揺らしている。
「あのねぇ兄ちゃん。これも全部、兄ちゃんのせいなんだからね?」
低い声で怖がらせようとしても太郎は全く怖がらない。
「悪い悪い。美味かったって」
それを聞いた途端、険しい顔から笑顔満ち溢れた顔になった。
「最初からそう言えばいいのに。ほら、もっと食べて!」
さっきより数倍多く掬い、さっきと同じように太郎の口へ入れた。
「ゴホッ。だから無理に入れるなって」
太郎の忠告も無視し、どんどん詰め込む。
すると喉に詰まってしまい、太郎は大きく咳き込んだ。
慌てて小太郎は水を飲ませた。
「フーッ。小太郎、お前なぁ…」
小太郎はパチンっと手を合わた。
「ホンットゴメン!!久しぶりの兄ちゃんとのデートで嬉しくてつい…」
その言葉を聞くと、太郎は険しい顔から一転し、笑顔になった。
「オレも嬉しいし楽しいよ。でもお前の場合、度が過ぎる」
またすぐに責め口調になり、小太郎は消沈した。
「ごめんなさい…」
すると、頭に重みを感じた。
顔を上げると太郎が頭を撫でている。
「許す」
小太郎は少し口角を上げると勢いよくパフェを口に運んだ。
レストランから出る頃には日が傾いていた。
「結局、ゲームと外食だけで一日が終わったな」
「でもオレ、楽しかったよ」
「オレも楽しかった」
太郎のその一言で小太郎の頬が緩む。
いつも太郎にはバカにされてばかりだが、一緒にいるこの空間が小太郎は好きだった。
二人でゲームをしている時。
二人でご飯を食べる時。
二人で笑い合う時。
太郎には何気ない時間かもしれないが、小太郎にとっては『宝物』だ。
「さてと、家に帰ったら夕ご飯作らないと」
「え、まだ食べるの?」
つい先ほどレストランでパフェを食べたばかりなのに食欲がまだある太郎に小太郎は少し引き気味で聞いた。
「当然だろ。スイーツとご飯は別腹」
「ぽっちゃり体型の人に相応しいセリフを痩せてる兄ちゃんが言わないで」
太郎はまた笑っている。いつもみたいにキラキラさせた顔で。
仕方ないとばかりに小太郎はため息を吐きながらも太郎の隣を歩く。
これがずっと続けばいいのに——
そう思っていた兄弟の絆に一本の刃が降りかかることを二人は、
まだ知らない。
理想の兄弟その日まで WORLD @SkySora
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