いつもの日常

〜No.1〜

「小太郎。小太郎。起きろ。朝だ」

 やっと目を覚ました小太郎は時計を見る。

『6:30』

「まだまだ朝じゃん。もう少し寝させてよ」

 太朗は呆れたようにため息を吐く。

「『明日はお兄ちゃんも久々の休みだし、朝から晩まで一緒に遊びたい!!』って騒いだの誰だっけ?」

 責める口調に小太郎はウッと言葉に詰まる。

「お、オレ…」

 ゆっくり小太郎が手を挙げると太朗は恐ろしいほどの笑顔になった。

「じゃあ、起きないとな?せっかくの『休み』なんだし」

 小太郎は嫌々布団から脱出した。

「でも空とは遊ばないのか?」

 太朗は布団を畳みながら聞いた。

「アイツは森村とショコラケーキ食べに行くって」

『本堂空』は小太郎の親友だ。空は『森村楓』というクラスメイトを想っているらしい。

 実は楓も空のことが好きなのだ。

(さっさとくっつけばいいのに…)

「まぁそう言うな。空だって頑張ってるんだから」

 小太郎は仰天した。

「な、なんで分かったの…?」

「何年一緒にいると思ってんだよ。顔に出てたし」

 さすが兄だなとばかりに小太郎は感嘆の声を漏らす。

「あまり心を読まないでくれると助かるんだけど…」

「お前が分かりやすいんだよ」

 太朗はフッと微笑むと小太郎の背中を押した。

「さあ、朝食食べて準備して。行くぞ、ショッピングモール」

 また小太郎は「えっ」と声を漏らし、振り返った。

「なんで…?」

 太朗は小太郎の机を指さした。

「あれ全部今日のスケジュールだろ?」

 カァと顔が赤くなった。

「わーーーー!!見ないでぇぇ!!」

 瞬時に大量のスケジュール表を隠した。

「今更隠しても遅いって」

 太朗は肩を揺らしながら爆笑している。

 そんな顔に苛立って小太郎は顔を顰める。

「悪い悪い。俺が悪かった」

 全く思ってない言葉に包まれても許す気はない。

(まぁオレは大人だし?『大人』だし?許してあげますか)

「まぁ…許してあげなくもないけど?」

 そっぽを向きながら冷淡に言うと、

「『大人』だから?」

 また言い当てれた。

「ムキーーーーッ」

 猿のように発狂する小太郎に太朗はまた爆笑した。

「もうっ。早く朝ごはん食べよ。せっかくの休みなんだから」

 強引に話を切り替え、小太郎はドアノブを捻る。

 いつもコレだ。太朗にバカにされってばっかり。

 それでも楽しく思っている自分がいる。

(だって大好きなんだから仕方ないじゃん…)

 小太郎と太朗が歩いている廊下の窓から光が入っている。

 まるで二人の仲を表すかのように。








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