第3話 ケモナー奴隷

この世界には奴隷が存在していた。

但しそれは人間ではなく、亜人と呼ばれる種族を人間が捕らえ、奴隷として扱っている。


「おら!ちんたらするな!」


街中を歩いていると、鎖に繋がれているケモミミっ子が、モヒカンで上半身サスペンダーだけの大男に蹴り飛ばされているシーンを目撃してしまう。

そんな酷い状況を俺は黙って見過ごせなかった。


「おい!乱暴はよせ!」


俺の中の正義の心が彼女を救えと滾る!

決して蹴り飛ばされた際に、パンツが見えたお礼ではない。


「ああーん?なんだてめぇ?奴隷をどうしようが俺の勝手だろうが!!」


この男の主張は正しい。

勿論俺もそれを理解している。

だから俺は、大人の問題解消方法を実行した。


「これで」


「お、おう。まあこれだけ出すってんなら」


俺は小袋を男の目の前で開いて見せる。

中には金貨が詰まっている――裏切ったパーティーメンバーの遺品を売り飛ばして得たお金。

男は目の色を変え、腰元からスクロールを取り出した。


「……」


読めん!

言葉は分かるというのに、何故か字は読めない。

全く中途半端な転生チートだ。

それを俺はKKYM06ワナビーに見せた――長いので次からはワナビ―と略すことにする。


「契約上との書類ですね。ここに親指を」


言われて指を押し付けた。

スクロールから煙が上がり、奴隷少女の額に浮かんでいた指紋の様な紋章が少し形を変える。

ひょっとして所有者の指紋の形が浮かんでいるのだろうか?


「へへ!毎度!」


男はほくほく顔で去って行く。

俺は怯えた表情で此方を見るケモミミっ子に笑顔で手を伸ばす。


「俺は山田。こっちはワナビ―だ。大丈夫、安心してくれ。俺達は君に酷い事をしたりはしないよ」


「あ、ありがとうございます。ご主人様」


むう。

ご主人様呼びは最高だ。

だがそれは人を駄目にする魔性の呼称だ。


「俺の事は山田って呼んでくれ」


「でも……」


「俺は君を奴隷として扱うつもりはないよ」


俺の言葉を聞き、ケモ子の目に大粒の涙が浮かぶ。

そのまま彼女は俺に抱き着き、わんわんと声を上げる。

きっと辛い思いをしてきたのだろう。


俺はそんな彼女の耳の付け根を優しく撫でる。

もふもふしてて最高だった。


≪ケモナーゲットイベント!コンプリート!≫


自発的に動いたつもりだったが、どうやらイベント扱いだった様だ。

ま、別にいいけど。

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