第2話 ボスヒロイン獲得からのざまぁ

「山田!そっちに行ったぞ!」


「任せろ!」


仲間が魔物を追いやり、それを俺が仕留める。

完璧なコンビネーションだ。

この世界にやって来て既に3日、俺は冒険者になりS級冒険者の皆とパーティーを組んでいた。


「やったね!山田!」


パーティーの紅一点。

魔導士のヨヨが俺の腕に抱き着く。

身に着けているピンクのローブせいで分かり辛いが、彼女の胸はエクセレントのEだ。つまりでかい。

柔らかい感触が俺の腕全体を覆い尽くし、それはまさに桃源郷だった。


「この調子なら奥まで行けそうだな」


「これも全て山田のお陰だ」


「ははは、そうおだてるなよ」


全ては剣の力のお陰なのだが、やはり褒められると悪い気はしない。


「いこうぜ!ダンジョン踏破だ!」


「おう!」


俺達はガンガンとダンジョンを進んで行く。

今挑んでいるダンジョンは100階層あるそうだが、今まで皆は99階層迄しか進めていない。

それは100階層にとんでもない化け物のエリアボスが存在していた為だ。

今回俺が加わった事で戦力が大幅に増したので、エリアボスを倒すべく俺達は100階層を目指していた。


「こいつが100層のボス……」


そこは広い吹き抜けのエリアだった。

99階層の中心部分に巨大な穴が開いており、その中央に巨大な菱形のクリスタルが鎮座していた。

戦うにはここから飛び降りる必要があるが、形状的に一度そこに入り込めばボスを倒すまで脱出するのは難しそうだ。


「何か策は有るのか?」


「ああ、ちょっと剣を借りて良いか?」


「ん?ああいいよ」


俺は疑う事無く、パーティーリーダーのアランにチート剣を渡す。

次の瞬間――


「えっ!?がはっ!!」


俺は穴の中に蹴り落とされた。

背中から落ちた俺は、強い痛みと衝撃にむせる。


「げふぉっ……がっ……何を?」


「はーっはっはっは。バーカ!この剣さえ手に入ればてめーに用はねーんだよ!そこでくたばりな!」


その言葉に俺は耳を疑う。

ボッチの俺にとっては、たった2日でも千年の既知にも等しい。

だから俺は彼らの事を心から信じていたのに。


「そんな……俺達仲間じゃなかったのか?」


「はっ!てめぇなんざ真の仲間の訳ないだろ!!」


「人の胸ちらちら覗き込んで!アンタキモいのよ!」


穴の縁からヨヨが顔を覗かせ、上から俺に唾を吐きかける。

普段ならご褒美ありがとうございますという所だが、流石に今はそんな気にはなれない。

一体俺の何が悪かったというのか?


「じゃーな!はっはっは」


そう言うと、アラン達はその場を去ってしまう。


「貴様が挑戦者か?」


その時、背後から声が駆けられる。

それはこのエリアのボスである、巨大なクリスタルであった。


≪イベント発生!≫


久しぶりに女神様のアナウンスが入る。

こっちは仲間に裏切られて落ち込んでいるというのに……

まあいい。

今はボスを倒す事だけを考えよう。


「来い!」


手の中に柄の感触が生まれる。

チート剣が返って来た感触だ。


残念だったな、アラン。

この剣は俺が契約している。

例え盗まれても、こうして念じればいつでも俺の手元に戻って来るのさ。


この機能を利用して、売っては取り返すで一儲けする事も出来たが、俺は某ロクデナシ主人公とは違う。

そんなモラルの欠如した真似はしない。


「一人で我が前に現れるとは、見上げたものだ」


巨大なクリスタルがみるみる縮んでいき、最後には人の姿に変わる。

美少女だ。

但し、耳や型は機械チックなごついデザインをしていた。


「我が名はKKYM06ワナビーだ」


「女性に剣を振るうのは趣味じゃないんだが……仕方がないな」


俺は剣を構える。

俺と100層エリアボスの激しい戦いの火ぶたは切って落とされた。


(略)


俺は勝った!


「見事だ。今この時より、貴方を私のマスターと認めよう」


そういうと彼女は俺にしな垂れかかる。

肩とかはごつごつしているが、それ以外の所は驚くほどに柔らかい。

しかもいい匂いまでするのです、思わずどぎまぎしてしまう。


「マスター、体温が上がっている。私が欲しければいつでも言って欲しい」


彼女の顔が近ずいて来る。

俺はごくりと唾を飲み――


≪ざまぁイベント完了!!≫


「ふぁっ!?」


触れるか触れないかの所で、空気を読まないアナウンスによって邪魔されてしまう。

ていうかざまぁイベント?

いつそんなイベントが起こったんだ。


「ちょっと上見て来る」


「では、私が」


何だか少し気になったので上の様子を見に行こうとすると、KKYM06ワナビーが俺を抱き抱えて飛びあがる。

俺はアラン達が去って行った通路の方へと向かう。

そこには――


「うっ」


「見事なひき肉です」


食いちぎられた内臓や手足がそこには転がっていた。

落ちているパーツから、アラン達に間違いないだろう。

どうしてこうなった?


≪奪った剣の試し切りの最中に剣が転送されてしまったので、そのまま全滅!ざまぁ!≫


ご丁寧にアナウンスが原因を教えてくれる。

つうか、俺何もしてないのにこれはざまぁに入るのか?


後、裏切った仲間が因果応報に会ったという流れだが、全然爽快な気分にはならなかった。

寧ろ気持ち悪い。

グロすぎて夢にまで出てきそう。

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