異世界ショート
まんじ
第1話 トラック転生からの奈落落とし
朝目覚めると、俺はトラックにひかれて即死する。
これは比喩表現ではない。
正真正銘、ベッドから上半身を起こした所で部屋の壁を突き破ってトラックが突っ込んで来たのだ。
正に理不尽ゲーも真っ青のゲームオーバーだった。
だが世の中捨てたものではない。
俺は命を落としたが、そんな俺を転生させてくれるという存在が現れる。
みんな大好き女神様だ。
ボンッキュッボンの美人で、体に白い布を巻いているだけのエチチな恰好だった。
その理知的な表情から駄女神成分は微塵も感じられない。
女神ガチャに勝ったとはこの事だ。
駄女神は見る分には面白おかしいが、接するとなるとストレスがマッハなのは目に見えているからな。
「転生に置いて希望はありますか?」
「テンプレみたいなウハウハな人生を送りたいです!」
「いいでしょう」
俺の希望はあっさりと通る。
流石出来る女は違うぜ。
「では」
女神様が俺に御手を向けると視界が真っ白になり、いきなり見た事のない場所へと景色が変わる。
それは石造りっぽい建物だった。
「おお!勇者様方!よくおいでなさいました!」
周囲を見渡すと、何故か学生服を着た俺のクラスメイト達がいた。
あれ?皆も死んだのか?
集団転生?
クラスメート達が騒めく中、ニップレスを大事な所に3点リーダーの様に張り付けただけの格好の女性が前に出る。
彼女は自身を転移の巫女と名乗った。
痴女の間違いだろと突っ込みを入れたかったが、陰キャの俺は黙って様子を伺う。
「ここにいる26人の皆様は、この世界を救うために召喚されました」
痴女巫女が掌を此方へと向けると、胸元のたわわな果実がプルンと揺れる。
ウラガン、あれは良い物だ。
「巫女様。ここには27人いる様ですが?」
巫女の背後に控えていた兵士が、俺達の数を数え報告する。
一人多いと。
「なんですって!?召喚したのは26人の筈よ!何者かが紛れ込んでいるというの!?見つけ出しなさい!!」
巫女の命令で犯人探しが始まる。
そして俺が珍入者だと結論ずけられる。
何故なら皆が制服を着ている中、俺だけ血塗れのパジャマを身に着けていたからだ。
よく見ると脳漿の様な物まで袖に付いている。
どうやら死んだ体を、適当に再生してこの世界に送られて来た様だ。
女神様。
手ぇ抜きすぎです。
出来る女だと思っていたが、結局は駄女神だったようだ。
「この者は悪魔の遣いです!即刻奈落に落としなさい!」
「いや、ちょっと待って!俺は悪魔の遣いじゃなくて、ここにいる皆のクラスメートです!」
折角転生したのに、よく分からん所から落とされて昇天はごめん被る。
必死になって他の皆に知り合いアピールをするが、周りの人間は俺など知らないという様か顔で見て来る。
え!マジで!?
いくら俺がボッチ陰キャとは言え、誰か一人ぐらい俺の顔を覚えてるもんだろ?
マジで俺県外?
「この悪魔め!」
屈強な兵士達に取り押さえられ、俺は無理やり引きづられてしまう。
振り解こうにもびくともしない。
ってか、ひょっとして転生チート無し?
「ざっけんな糞女神!」
穴に叩き落された俺は雄叫びを上げる。
随分長い間落下しているが、いつまでたっても底に付く気配がない。
ドンだけ深いんだよ。
≪その時!偉大なる女神の加護によって、山田は無限に落ち続けるループの地獄から救われた!≫
急に変な文字が頭上に浮かび、女性のアナウンスが流れる。
その途端体の落下が止まり、俺は尻もちを搗く形で俺は地面に到着する。
「なんだぁ?」
アナウンスも気になるが、取り敢えず周囲を見渡す。
大分薄暗いが、それでも全く見えないという事は無い。
一言で言うならそこはダンジョンといた感じの場所だった。
≪絶体絶命のピンチの前に、山田の目の前に宝箱が!≫
再び文字とアナウンス。
てかこの声、良く聞けば女神の物と一緒だった。
どういう事?
「まあとにかく、開けるか」
アナウンスと同時に目の前には宝箱が姿を現している。
ひょっとしたらこれが俺に与えられた転生チートなのかもしれない。
「おお!これは!」
中には金に輝く短剣が入っていた。
それを手にした瞬間、頭の中に言葉が流れる。
これはさっきまでの女神のアナウンスとは別物だ。
「契約完了って事は、今からこいつが俺の相棒って事か」
ごごごごと重苦しい音が響き、足元が――洞窟全体が揺れる。
見ると壁が動き、そこから外の光が差し込んで来ていた。
俺は直感的にそれが出口だと理解する。
「成程。ここからスタートな訳か」
いざゆかん!
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