第47話
「おかえりなさい」
いつも通り、私のベッドでぐうたらしている銀子。持ってきてもらったであろうタコスを食べている。
お前、この前タコス食べた時「食べずらい。二度と食べない」って言ってなかったか?
それと、一応私が寝る布団なんだよな。もちろん皿があるので一応落として汚れているとかは無いのだが、粉とか落ちるから出来る事ならやめて欲しい。
「……あぁ、ただいま」
この場合、強く言えない私にも問題があるのだろうか。
あったとしても、汚れても向井さん達頼んで変えてもらおう。
「会議長かったですね。待ちくたびれましたよ」
「ああ。あの椅子硬すぎて腰が痛い」
「えー大丈夫ですか?………………あっ、私がマッサージしてあげましょうか?」
「お前は駄目な部分まで触るだろ」
「駄目な部分ってー?」
「私は疲れてるんだ。風呂入ってご飯食べて寝かせてくれ」
「ご飯食べれる元気あるなら『行為』は出来ますよ!」
「行為と言うな行為と」
しかも言ってること自体はその通りなのが腹立つ。
「じゃあまずは飯に付き合え」
「『まずは』ってことは―――」
「飯」
「はい。」
ネタを言って茶化そうとしてきたが、押しとおした。
「私のご飯はあるか?」
「あるよ。にんにくソースが絡まった味の濃い鶏肉と、サラダと、オニオンスープ」
「一口食べたな?」
「タコスに包みやすかったから」
「全く……私にもそのタコス一口くれ」
「あーん」
「……ん」
銀子のペースに呑まれるのは癪だが、大人しく銀子の持つタコスに齧り付く。
シャキシャキとしたレタス、よく分からない味の肉、控えめな辛さをした甘辛ソースとこの世界特有の濃厚なチーズ。ナンみたいな包むやつは小麦粉の味がした。
一言でまとめれば美味しい。なんなら前食べた時よりも断然美味しい。
「……かわいい」
銀子からまるで道端の猫を見つけた時のような声をされたが、無視した。
私の為に持ってきてくれた鶏肉は、前の世界でも出てくるような普通の味だ。
言い換えれば美味い。米が進む。
「先生ってこの世界に来てから食べるようになったよね」
「そうか?」
「私が言えた事じゃないけど、気分で沢山食べたり全然食べなかったりするけど、それでも凄い量じゃない?少なくとも、昨日今日は凄い食べてますよ」
そうでもない、と言いたいところだが、確かに食べる量は増えた気がする。
部活(と言っても吹奏楽だが)を全力でやっていた学生の時くらいはあっても可笑しくはない。
そこから年取るにつれてだんだんと少なくなっていった……と言うわけでは無い。
部活が終わってから少なくなったのは当たり前として、受験中だろうが大学院に入ろうが飯はある程度食っていた。
それじゃあいつから食べなくなったか。
教師になってからだ。
「飯の量の話になると、あれを思い出す」
「あれ?」
「お前が家に来た時の事だ」
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