第7話

 皆でご飯を食べた後、私達は再びお城に戻ってとある『教室』に着く。

『教室』と言ったのは、部屋の内装が元の世界の教室そっくりだったから。

 黒板に教卓、人数分の机と椅子、窓から差し込む日差しはと真新しく感じる教室は、夏休み明けに久しぶりに教室に来たような感覚に似ていた。

「魔法の能力持ちは前の席に、それ以外は後ろの方に適当に座って」

 教卓の横、窓際で本を読みながら言う白衣を着た子供がいた。

 外から入る風になびく綺麗な白髪は、この世界の人とは違う人のような、いや、前の世界には絶対にいない、そう思わせる人だった。

 言われたと通りに私や火南のような魔法の能力を持ってる人は前に座り、それ以外は私達の後ろに座った。

「ん?貴方達は座らないの?」

「仕事柄、生徒達と座るのは少し違和感があってな」

「すまないが、後ろで見ていてもいいか?授業にはちゃんと参加するから」

「そう。まぁ自由にどうぞ」

 先生と獅子山先生はいつも通り後ろから私達を見てくれているようで、

 子供は興味なさげに先生達から目線を外す。

 分厚い本を閉じると、教卓の前に立ち、深呼吸を一つ。


「早速だけど貴方達、魔法とはどんなものか分かるかしら」


 手を白衣のポケットに突っ込み、けれど真剣な目をした子は、いきなり難題を渡してきた。

 まるでこの世界の哲学のような話に、私達はお互いに目配せをし困惑した顔を残す。

「そんな難しいことじゃないし、思ったことを言えばいいわ。貴方達の世界にも魔法がある物語がいくつもあるのでしょ?それでもいいわ」

 白衣の子供、いや、白衣の先生は少し笑みを残しながら手助けをすると、と手を上げる人が一人。

「はい、貴方」

「え、えーと、ゲームですけど、MPとか消費して出せる……技?」

 白衣の先生はその答えを聞くと、クスクスと笑いながら黒板の前に立つ。

「あっ、届かないや。えー……斗琴さん、だっけ?板を書いてもらってもらってもいい?」

「あぁ、別にいいぞ」

 先生が黒板の前に立ち、左上から横書きする。

 カッカッカッ、と、いつもの音といつもの字が並べられるのが、少し嬉しい私がいる。

 色んな先生がいるけれど、先生の字が一番かっこいいと思うのは、彼女贔屓でみているからだろうか。

「まだある?」

「じゃあはい、私が見たのは『神様が与えられた奇跡』だった気がする」

「『精霊とか杖の力』……を使う」

「シンプルに『火とか水とか雷とか出す』じゃダメか?」

「『魔法陣』」

 十分ほどで色んな意見が飛び交う。

 白衣の先生は満足した顔を浮かべながら頷く。

「なるほどね、とりあえず貴方達の魔法の知識が分かったわ」

 白衣の先生は再び黒板の前に立つ。教卓でよく見えないが、踏み台か何かを使って黒板の真ん中に文字を書く。

「いま、貴方達が言ってもらったこと、ぶっちゃけて言えば全部合ってるわ。神が人間に渡した奇跡と教会では広く言い伝えられてるし、精霊に力を借りる魔法使いもいる。貴方達を連れてきた仕組み、あれは魔法陣だし……全部に説明してたら日が暮れてしまうわね。

『魔法とはどんなものでしょう』なんて言ったけど、そんなの私達もさっぱり分からないわ。魔力や精霊や魔物や、分からないことが多すぎる」

 出てきた意見を囲んで下の方に『全部合ってる』と大雑把に黒板に書く。

「そんな摩訶不思議な『魔法』を研究していて、今日から貴方達の魔法の訓練を任される『富士見七ふじみなな』よ。貴方達の世界で言う先生って所かしら。今日からよろしくね」

 黒板の上の方に上がった・・・・彼女は、クラス全員がその文字を見えるようにと名前を書いた。

 いや、そんなことはどうでもいい。私達は富士見先生の足元を見る。

 明らかに、空中に浮いているのだ。最初は踏み台かと思ったが、身体ごと浮かすとは誰が思っただろうか。

「浮けたら私いらないじゃないですか」

「魔法を知らない小童ちゃん達を脅かせたくて。気持ちよかったわ」

 先生に向かってウインクする、私もたまにするから憎めないのがちょっとウザイ。

「ってことで、訓練……もとい、授業を開始するわ」

 ここから、私達は『未知』を体験した。

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