第5話
まずは火南が水晶に手を置いた。
普段から女子に好かれるイケメン顔だが、若干緊張しているのが顔を見て分かる。
「【
「火南は火属性の能力か!火属性はとにかく威力が高く、汎用性も高い。期待しているぞ!」
「あはは、期待に答えれるように頑張ります」
「よーし、次は俺の番だ……ん?【
「決して壊れないくらい堅い、だよ」
「おお、流石銀子。頭がいい!」
「これくらい普通だよ。さてと……」
「じゃあ次は私だね!」
あっ、私が行こうとしたのに。
最後が嫌だからってのはお互い様だったかー。ぴえん。
「なになにー?お!【未来予知】だって!今までで一番分かりやすい!」
「未来予知?じゃあ私の未来を見てよ」
「えっ銀子の?……うーん、どうやって未来見るんだろ」
「未来予知は自分が危険な状態になった時に発動する能力と言われている。だから、自分でこの未来を見たいというのは無理だね」
「そんなー、仕方ない、じゃあ次は銀子の番ね」
「うん」
私は水晶の前に立ち「速水銀子です」と天飛さんに伝え、手を乗せる。
水晶から何かが吸い寄せられるとかの不思議の感覚は特になく、ただ水晶に手を乗せるだけ。
逆に何もないから緊張してしまう。
十秒ほど経つと、水晶に白い文字が浮かび上がる。
「【
まるで某映画のような能力に戸惑う。
え、なに?私はありのままになればいいの?
「女王?銀子女王様?」
「響ったら、そんなのやめてよ」
「冗談冗談、でも銀子綺麗だし女王なのはなんとなく分かる」
「あはは、私に惚れるなよー?」
惚れていいのは先生だけだし。
「でも、有名な物語のタイトルと同じだね。もしかしたら氷のお城とか作れるかも!」
「あはは、だといいなー。あのおじさんがやってた魔法も氷だったよね?お城とか作れるなら、少なくとも【未来予知】よりは派手かもね」
「あー!私のことディスったなー!いいもん、どうせ私は物語の中だったらメインヒロインの脇役キャラですよーだ」
「胸無いしね」
「銀子!?銀子ぉぉおおお!!!」
「あはは!ヤバい怒った!あはははは!」
こんな感じに、私達幼馴染達が終えるとクラスメイト達は次々と水晶の上に手を乗せていった。
「お?【
「あれ、私も【竜馬虎搏】ってやつだったよ」
「双子だから同じ能力なのかもしれない。過去に一度、同じような人がいた記録はある」
「香子はどうだった?」
「【
「うーん、ちょっとフォローしにくいかな」
「大和ちゃん酷い!そういう大和ちゃんは!」
「…………【
「ちょっとフォローしにくい」
「【
「【魑魅魍魎】...フフフ」
「ひぃっ!角寺さん急に笑ってどうしたんですか!?」
「なんでもないよ、熊野さん。僕にピッタリなやつが出たなと思っただけさ」
「
「雀か。【一刀両断】だったぞ。雀は?」
「おー、剣道やってる太刀川っぽい。私は【
「玉兎か、
「だからその名前で呼ぶなっつの!」
「よっ、
「獅子山先生、自分は【
「俺は【
「あはは、でも先生の巨体なら暴れた方が効率よさそう」
「三十六人、全員調べられたな。正直、ここまで時間掛かるとは思わなかった」
玉萌さんがやってから約一時間、この世界に来たクラス全員が水晶に乗せ終わり、能力を確認した。
後半はずっと響と遊んだり竜子達とかと話していたため後半の人の能力をほとんど見ていなかった。
「能力を調べ終わったら、次はいよいよ実習だ。と言っても、今日は基礎練習だったり顔合わせだったりだが…まぁ、何をやるかは見りゃ分かるか」
一時間前にも聞いた気がする。
先生のジト目が天飛さんにぶっ刺さる。
「教える立場の人間がそんなんで大丈夫か」と目で訴えている。
先生って、人一倍先生頑張ってるしね。こういう態度の人見ると腹立つってこの前愚痴ってたっけ。
「じゃあちょっとここから移動するぞー」
と、天飛さんが言い、私達を連れて移動する。
「あの、三間さんはなんと呼べばいいでしょうか」
「んー、何でもいいぞ。隊の皆からは隊長とか団長、天飛隊長とか天飛団長とかが多いが、別に天飛さんでもなんでもいいぞ」
「そうなんですか、というか隊長と団長って別じゃないんですか?」
「うーん、別に騎士団だから団長もでもあるし、形式上隊長と呼ばれるから隊長と呼ばれるし、おかしくはないぞ」
「自分たちの世界では、団長は応援団長とかが使うイメージで、隊長は自衛隊...まぁ、王国騎士団さんみたいなお国をお守る人のイメージがなんとなく強いですね」
火南の割とどうでも話の中に角寺君がすっと会話に入っていく。
角寺君、この世界に来てからよく話すようになった気がする。どうしてだろう。やっぱりオタクだからかな?
「フィクション系の団は王国騎士団以外にも、盗賊団や海賊団などの方にも団って付きますね。そっちじゃは団長とか賊長呼びが主流な気がする」
「おぉ、でもこの世界では賊に団は付けないな。っとちょっとここで待ってくれ……王国騎士団、全員集合!」
天飛さんの号令が飛ぶと、訓練をしてたであろう騎士さん達が飛んで集まる。学年集会くらい集まってるし、ざっと数百人くらいいるだろうか?
と思ったら、お城方面からまだまだ集まってくる。
一分もすると全員集まったようで、甲冑を着た大きな男の人たちが綺麗に整列している。
謎の威圧感があり、ちょっと、いやかなり怖い。
「これより、異界の者達の訓練を始める!一秒でも彼らの才能を開花させ、魔族に支配された世界に終止符を打つ彼らの道となれ!!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」
歓声?怒号?ものすっごい男の人の叫び声が訓練所に響き渡り。あまりの声量に地面が揺れる。
「あはは、少し脅かせちゃったかな」
天飛さんがポカーンとした表情の私達を見て少し笑う。
「今から、名前を呼ばれた人は前に出てきてほしい。
一人一人、名前を呼ばれて前に出る。
男女、絡みある人、そんなの関係なしに呼ばれていく。
「君達は剣系の能力だ。ここに集まっててくれ」
剣系?確かに、さっき喋った子の中に剣や刀などの文字が入ってる能力がいた気がする。
そう考えると、私は雪だから、魔法?
だんだんと呼ばれていき、残ったクラスはだいたい半分ほどになる。
「さてと、ここから魔法の能力、防御の能力特殊な能力、正体不明の能力が集まっている。魔法は明日教えるため、今日は武器などの方に行ってくれ。それじゃあなるべく均等に組んでくれないか」
なるほど、私や火南などは魔法、響みたいなやつは特殊の部類に入るんだろう。そういう人たちも武器を扱えということか。
「銀子!一緒に組もう!」
「別にいいよ」
「おっ、二人も組むのか?俺と火南もそこに入れてくれよ」
「別に私はいいけど」
「えー、翼ってうるさいから嫌だ。火南、翼の介護よろしく」
うわー、この子真正面から言っちゃったよ。翼の顔が面白いことになってるよ。
まぁ、確かにその通りだから否定も出来ないけど。
「えっ……銀子はそう思ってないよな?」
私を見るな。
「……あはは」
「大丈夫だぞ!翼は大丈夫だ!向こうで俺と一緒に組もうなっ、なっ?」
翼のことはひとまず置いといて、早めに先生を捕獲しておこう。
「ねぇ響、先生と組むのはどう?」
「えー、でも怒られそうじゃん?」
「先生、私達と組もー」
「無視された!?」
「銀子と響か、私は話余った人と組む予定だったから別にいいぞ」
「やったー、ほら響も喜んでますよ」
「喜んでないよ!あ、いや先生と組むのがいやだってわけじゃなくてですね、えーと」
「そうかそうか、響は課題二倍な」
「ひえー、お許しを!」
いつものようなやり取りをする二人。
「あっ、でもこの世界に来たから課題ありませんね!」
「……確かに、それは考えていなかった」
ほんの一瞬だけ、先生の顔が悲しそうになった気がする。
「ん?どうかしたか、銀子」
「……別に、何でもないですよー」
「?」
どうかしたかは私の台詞なんだけどな。
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