第3話小隅さん、終了のお知らせ
小隅さんは行方不明になった。
梅雨の時期ではあるがその時は特に降水量が多かった。
三日三晩豪雨が続き、朝刊の週間天気予報にまた雨マークが並ぶのかと誰もが思う、そんな朝に行方不明となっていた小隅さんは大雨の日の、雨が少しだけ小降りとなった朝に発見された。
前日の夜、勤務先から帰宅しようとしてそのまま行方不明となった小隅さん。
Q.小隅さん、貴方は何で行方不明になったのですか?
A.はい。
俺はあの晩、雨が尋常じゃないくらい降っていたので、特に気を付けて車で帰宅したんです。
自宅の近くに借りていた駐車場に車を停めて、家に向かいました。
いつもだったら徒歩3分位の距離なんです。
でも、そのときに限ってマンホールの蓋がずれてたんですよ。多分雨のせいですね。
ちょっと隙間が開いてまして…
ああ、隙間に引きずり込まれたのですね?
半分そうです。
半分、と、言いますと?
はい。
その時、本当に連日大雨だったんですよ。
俺の膝下位まで水が来てるところもあるくらいでした。
でね。いろんな物が流れて来るんですよ。そりゃもういろんな物が。
…パイプが流れて来てたんですよ。
俺の住んでいる所はそこそこ田舎なんで、結構農業やってるとこがあるんです。そこのビニールハウスの骨組みのパイプが流れて来てたんです。
なんでか知らないけれど。
風も強くて、しかもそこは坂になってたんです。家は坂の上、俺は坂の下。
雨水の流れは速い。上から流れて来るパイプ。
避けれませんね。はい。
大怪我確定です。
いや、結局怪我どころじゃなくなったんですけど。
ああ、もうダメだーって思ったとき、急に足が引っ張られたんですよ。えっ?って思ったときにはもうパイプは通過していて。ただ、引っ張ってくれたのが隙間の妖精さんだったのでそのままマンホール行きでした。
はい。水が溢れているマンホールでした。
溺れました。
ぶっちゃけ、苦しかったです。
こうして行方不明になった小隅さん。
翌日の朝、遺体となって発見されたのは近辺の川である。
マンホールに落ちた後、下水道を流され終点の川まで行ってしまった小隅さん。
これにて、25年の人生に幕を閉じたのであった。
めでたし、めでたし。
そして始まる第2の人生。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます