壹、 天兎 2
ばたついた週末を終え月曜日を迎える。その朝、目が覚めるとまたアオがベッドの中にいた。
「おいお前! なんでこっちにくるんだ! 窓際で寝るって言っただろ!」
「月が沈んだあとの窓際なんて、ただ寒いだけじゃない! あんただって嬉しいくせに!」
「うっ……れしいかどうかは別にして、ほんとびっくりするからやめろよ……」
起き抜けに突然、ベッドでアオを見るのは心臓に悪い。兎の姿なら割と冷静に対処できるが、人の姿だった日にはもう、赤くなる顔を抑えるだけで精一杯だ。
何せこいつは、寝るときには素っ裸なのだ。もちろん何度も服を着用するように言ったのだが、こいつはどうやら寝相が悪いらしく、睡眠時に、兎に人に姿を変える。するともう、服など脱げてしまって意味がない。
そしてアオが俺のベッドに潜るときは、狙っているかのように、だいたい人の姿をしていた。そんな朝はしばらく、アオの肌の柔らかさが脳裏から離れなくて煩悶した。
こうなるとあまり口論にもならず、結局、俺が引き下がることになる。渋い顔で着替えをし、顔を洗って、朝食を済ませる。ついでにアオにも同じ朝食を用意してやり、それを餌にようやく着物の着用を要求。片手間で適当に家事を片付けた。
学校へ行く時間になったので鞄を持って玄関先に立つと、相変わらず寝起きとは見違えるような立派な着物姿でアオが現れる。
「これからこうしてあんたを見送るのが、あたしの日課になるわけね」
「妙な言い方はやめてくれ。あと、俺が留守の間、家の中の物とか壊すなよ」
「こんなお淑やかな兎に向かって失礼ね」
淑やかの意味を知らないのではないかと思ったが、わざわざ説明する時間も惜しいので、無視して俺は家を出た。
街の中心からやや北に上った辺りに、俺の通う高校はある。駅からも十分近い立地のため、遠方から電車で通う生徒も少なくない。この時間、校門付近は登校する生徒でいっぱいになる。
ただ、こういう場において俺は、少しだけ敬遠されていた。視線を向けても、あまり関わりたくなさそうに目を逸らす生徒がほとんどだ。今年になって入学した一年生たちからは、かすかに噂話が聞こえることもある。
「あ、あの人じゃない? 二年にいる不良って……」
「宮東紫苑ね。中学の頃から街中でよく喧嘩しててさ。今はおとなしくなったって聞いたけど……俺、一回見たことあるんだよね。駅の裏路地で七、八人相手に全員殴り倒してて」
「え、じゃあ警察常連って話も本当なのかな。うちの中学では、先輩が病院に送られた、みたいな話も聞いたけど」
しかしまあ、この手の陰口にはもう慣れた。俺が入学した一年前から既にあったものだし、だいたいの噂話は聞くたびに尾ひれが増えていた。そして、わざわざ本人がそれを訂正して回ったところで意味はないのだということも、そのうちにだんだんと理解した。
だいいち、基本的には根も葉もない噂でも、その根本の部分にはやはり真実が混じっている。俺は確かに、世間で言うところの不良だった。学校もろくに行かず、昼夜問わず喧嘩をするくらいには荒れていたのだ。もちろん今はもうそんなことはないし、全ては過去の話になった。それでも、昔の汚名というのは、なかなか拭えないものらしい。
俺は周囲の会話も視線も無視して早足で校門をくぐり、二年の昇降口へと向かった。そうしていつもこの辺りで、前方に固定していた視界を左右に巡らせ始める。変わらず煙たがるように顔を背ける人もいるが、別に気にならない。俺が探しているのは一人だけだ。
靴を履き替え、廊下、階段を経て教室に辿り着く。室内へ入ろうと扉に手を伸ばしかけたところで、それは突然、独りでに開いた。
「これは、申し訳ありません」
偶然にも一人の女生徒と鉢合わせになる。俺は少しだけ驚いた。その女生徒こそが、俺がここまで探していた相手だったからだ。
同時に教室の中が一瞬だけ静止した。皆の視線が俺の方へと集まる。普段なら、その視線は俺への警戒。横目でこっそりと向けられて、俺が着席すると徐々に散っていくはずのものなのだが、この場合は少し違った。警戒に加えて少しの好奇、さらに彼女への心配が含まれている。
しかし彼女は、そんなことをまったく気にかけることなく言った。
「おはようございます。宮東さんでしたか」
「あ、ああ……おはよう」
一歩下がって、礼儀正しく朝の挨拶。美しいソプラノの声が耳に心地良い。背は俺よりも頭一つ分ほど低く、黒目がちの大きな瞳が印象的な女の子。その瞳と同じ、真っ黒で艶のあるミディアムヘアが肩上で切り揃えられている。
名を、月見里(やまなし)紅音(あかね)という。変わった苗字で人目を集め、かつ本人が清楚で可愛らしい容姿をしているためか、男女問わずに人気がある。品行方正でやや硬い話し方に反して親しみやすい性格というギャップが好評らしい。
「ついさきほど数学の先生が教室にいらして、今日までの課題のプリントを、教科担当の生徒が集めておくようにと残していかれました」
「そう、なのか」
「はい。数学の担当は宮東さんでしたよね。せっかくなので、私も今、渡しておきます」
彼女は揺れるスカートを翻して席へと戻る。
俺は少しだけ離れてそのあとに続き、通路を挟んで斜め後ろ、窓際の自席に鞄を置いた。
「一番後ろの空いている席の上に集めて、休み時間に持っていかれるのがよいかと思います」
「わかった。そうするよ」
プリントを受け取った際、少しだけ触れた指先に、俺の心臓が跳ねた。
彼女は最後に「では、お願いしますね」と丁寧に告げて教室を出ていく。
たぶん、教室にいるクラスメイトの大半がこちらを見ていて、今、俺と同様に沈黙していた。
俺は受け取ったプリントに鞄から取り出した自分のものを重ね、一番後ろの空席に置くと
「えっと、じゃあみんな、適当にここに重ねておいてくれ。昼休みに持っていくから」
と誰にともなく向かって言った。
集まっていた視線は一度散る。しかし彼らは依然、一律に会話の声量を落とし、意識の端でこちらの様子を窺っていた。
まあ、その気持ちはよくわかる。彼らが気にしているのは俺と、そして今回においては、月見里紅音だ。彼女が俺に対してあまりにも自然に接する光景は、二年進級に際して生まれたこの新しいクラスにおいて、未だ馴染めない光景らしい。彼女はいったい、どうして俺に関わろうとするのだろう。彼女だって俺の噂は知っているだろうに。きっと誰もがそう思っている。
でも、皆がわからないように、俺にもその理由はわからないのだ。
普通、評判の悪い奴の傍にいれば、自分も悪く思われてしまう。そういった悪い評価というものはとかく伝染しやすい世の中だ。だから誰しも、色々なものを見て見ぬ振りする。
しかし彼女に限ってはこれが反対で、どんな相手にも分け隔てなく接する姿が、さらに評価されるという結果になっている。いつも人に囲まれていながら、そんな他人に流されることなく、しっかりと自分を持っている。それがまた彼女の魅力として、彼女の周りに人を集める。一部ではその溢れんばかりの人望を讃え、聖人だ聖女だと囃し立てる人たちもいるくらいだ。
俺は席に座って頬杖をつきながら彼女の出ていった方を眺め、ただ授業が始まるのを待った。
昼休みになった。俺は例のプリントを職員室に届けたあと、食堂の購買で手頃なパン二つと飲み物を調達した。この学校の食堂は毎日例外なく混み合うが、俺の場合はいくらか人除けが効いて買いやすい。はじかれ者の数少ないメリットである。
とはいえさすがに、食堂でそのまま席を取ろうとすれば待つことになる。それを見越して盆に載せるメニューではなく持ち運べるものを買ったのだからと、俺はすぐに踵を返した。
なるべくひとけの少ない場所を求めて彷徨っていると、廊下の反対側から歩いてくる人物に視線がいく。女生徒二人。うち一人は遠目でも見紛うはずない、月見里紅音だ。友人と楽しそうに談笑している。やがて俺との距離が縮まると、ごくごく自然に声をかけてきた。
「こんにちわ、宮東さん。職員室からの戻りですか?」
会話を中断されたもう一人は少し怪訝な顔をしていたが、おそらく理由は、その相手が俺だということの方が大きいだろう。
「ああ、ついでに食堂に寄ってきたところだ」と手元のパンと飲み物を見せる。
「そうでしたか。食堂は、混雑していましたか?」
「まあな。あそこはいつも混んでるよ」
「私もこれから行くところなのですが、では、覚悟して参ります」
月見里は冗談交じりに目尻を丸め、軽く拳を握りながら俺を見上げて笑う。その柔らかい笑みに誘われ、俺はふと気になったことを口にした。
「食堂に行くのか? 月見里、今日は弁当じゃないんだな」
俺の知る限り、彼女はいつも弁当持参だ。可愛らしい小さなお弁当箱を、教室の机に広げて食べていたはずだが。
「そうなんです。入学してから一度も使ったことがないと言ったら、部活の友人が一緒に行こうと言ってくれまして」
その友人というのが、隣の女生徒なのだろうか。
「一度も? それは珍しいな」
「はい。部では私だけでした。普段は家がお弁当を持たせてくれるので、行く機会がほとんどなくて」
食堂は混雑するからあまり使わないという生徒もいるが、それでも今や、入学して一年以上経った。初めてというのはなかなかレアだ。
しかしまあ、月見里であれば、あながち頷けないこともない。
まずもって彼女は弁当を忘れることなどなさそうだし、仮にそういったことがあったとしても、家から届けなんかが寄越されそうだ。彼女の家は大層な豪邸で、使用人までもがいるという。いったいどこまでが本当かは知らないが、そういう類の話をよく耳にするのだ。彼女の立ち居振る舞いは非常に令嬢然としているから、自然と周りも信じてしまうのだろう。
「宮東さんは、食堂では食べなかったんですね。やはり混んでいるからですか?」
「まあ、そうだな。あと……一人だとちょっと目立つんだ」
主に悪い意味で。自意識過剰では、ないと思う。
しかし俺はすぐ、口にしてしまったことをはぐらかすように、ぎこちなく笑う。
「もし食堂に行くなら、もう少し経ってからの方が空いてるよ。あそこは昼休みになってすぐが、極端に混んでるから」
「そうなんですね。では、少し時間をおいて行ってみます」
対して月見里の笑顔の、なんと自然なことか。
俺はその笑顔を数秒見つめ、すぐに我に返って歩き出した。
「じゃあ、またな」
「はい。よろしければ、今度、食堂ランチをご一緒しましょうね」
去り際、彼女のその言葉に俺はドキッとした。なんなら俺よりも隣の女生徒の方が驚き顔で月見里を振り返っていたが、内心そうしてしまいそうな気持ちは俺も同じだった。
……世辞か? さすがに世辞だよな?
しかしそれを確かめることなどできるわけもなく、俺は足早に彼女たちから離れる。少し距離ができたところで上階への階段に曲がると、俺たちのやりとりをずっと横で見ていた隣の女生徒が、にわかに声を高くして尋ねるのが聞こえてくる。
「嘘!? ねぇねぇ紅音ってさ、宮東くんと仲良かったの?」
「そうですね。以前、学校の外で少し話す機会がありまして、それから――」
俺が階段で上へと進んでいくにつれて、彼女たちの会話は聞こえなくなっていった。
人のいない昼食スペースを求めて屋上に流れ着いた。屋上そのものは割と人気があるスポットだが、夏と冬――つまり暑い時期と寒い時期はめっきり人が来なくなる。そして今の時期は既に暑い。快適なランチタイムをお求めならば、ここはもうお勧めできない場所となる。
それでも、立ち昇った厚い雲の下で給水タンクの影に座り、冷めたあんぱんにクロワッサン、冷たいコーヒー牛乳を飲んでいる分には、まだなんとか我慢が利くくらいだった。
眺めは良い。吸い込まれそうなほどの蒼い空にぽっかりと浮いた白い繊月は、まさに手元のパンの形そのものかもしれない。眼下一面には遠方の山々にまで続く街並み。階下は昼休みの雑談ひしめく教室だが、ここには一切の音がなく、煩い日常から隔絶された別世界にも思えた。
「ちょっと無防備すぎるんじゃない? あんた」
「うおっ!」
そんな静寂の中、突然背後から聞こえた声は俺の心臓を派手に貫いた。
「人間ってのは、こんな簡単に後ろを取られちゃうのねぇ」
振り向いた先にいたのはアオだ。しかも人ではなく兎姿。その首に見覚えのある青い大きな風呂敷包みを携え、外周に設けられたフェンスの上にちょこんと二足立ち。
いや待て。兎ってのはそんな危険なところに後ろ足だけで立てるような生き物だったろうか。
影の落ちた彼女の蒼い瞳を、俺は見上げる。
「なんでお前がここにいるんだよ」
「あんたが出てったあと、家にいるのも暇だって気づいてね。あんたの匂いを追いかけたのよ」
アオはそう答えながら、自慢げに兎姿の鼻をスンッとやった。
「何を勝手に……俺を見送るのが日課って言ってたじゃないか」
「見送りはしてあげたでしょ」
見送ってすぐあとをつけてくる奴があるものか。子供のお遣いじゃあないんだから。
とはいえ、今更咎めたところで後の祭り。むしろ騒ぎになっていないだけでもマシと言うべきか。何せ普通の高校に兎はいないから、もし見つかっていたらこんなに静かではないはずだ。
「……はぁ、まあいいや。お前こんなところ来て、よく見つからなかったな」
「この姿なら隠れる場所もたくさんあるし、外壁を伝って移動する分には、よっぽど見つかりっこないわ」
「外壁か……随分と身軽なんだな」
にしても校舎の外壁を伝う兎って……一応ここ、三階建の屋上だぞ。
呆れる俺に、しかしアオは気にしたそぶりもなく、さも当然と言いたげな顔で答える。
「大抵の獣は身軽なものでしょ。地上に来てもう丸二日休んだし、あんたがくれた食事と酒で回復も順調よ。これくらいは問題ないわ」
「そうか。それは何よりだ」
話に聞くユエとやらの力だろうか。眉唾ものではあるが、本人が順調と言うならまあいい。
「つーか、その風呂敷には何が入ってるんだ?」
「んー……まあ、色々とね」
アオは首を傾げてわざとらしくとぼける。
「何でもいいけど、着物はちゃんと入ってるんだろうな?」
「あ、それは家に忘れたわ」
「はあ!? 着物より優先するものがお前の荷物にあるのかよ? いいか、素っ裸で歩いて警察に捕まったら見捨てるからな!」
「けーさつ、ってのが何かは知らないけど……安心なさい。所構わず裸身を晒すような、はしたない真似はしないわ。今のところ、あんたの前だけよ」
「俺の前でも是非やめろ!」
そうしたら俺の心臓ももう少し穏やかになるはずだ。ニヤついたアオに向かってそれだけ吐き捨てると、俺は彼女を背にして黙った。素直にからかわれてやるつもりはない。
望み通りの反応が返ってこないとわかると、アオは「ふぅん」と真顔に戻って訊いた。
「それよりあんたさ。この群の中では、随分と邪険にされてない?」
群とは、学校のことか。これはまあ、言われるだろうとは思っていたがやっぱり言われた。
「……放っといてくれ」
「これでよく平然としていられるもんね。群から弾き出されるのは、獣にとっては死と同義だけど?」
「人間の場合はそうでもないんだよ。別に平気さ、これくらい」
「そうは言うけどさ。孤独が平気な生き物なんていないでしょ」
軽々しく言うアオのその言葉には、しかし妙な実感が伴っていた。
俺は何も答えず、手元に残ったパンの一欠片を口に放り込んで、せっせと咀嚼に勤しむ。
「あ、でもまるきり一人でもないか。ヤマナシっていったっけ? 好きなメスが近くにいれば、気も紛れるかもしれないわねぇ」
「んぐっ!? なんでお前がそれを!」
ようやくパンを飲み込もうとしたところへの思わぬ不意打ち。盛大に吐き出しそうになるのをなんとかこらえる。咳き込みながらアオを見ると、彼女はピョンっとフェンスを飛び降りて、俺の横に座り込んだ。
「え、何? 隠してるつもりだったの?」
「か、隠すも何も……いや、別に……」
「あっはっは! そっか、あれ隠してたんだ? ごめんごめん」
「お前……ちょっとそれは、笑いすぎだぞ」
隣のアオは、まるで転がるように短い両手で腹を抱えている。
俺は頭を抱えたい気分だ。
「まあまあ、いいじゃない、照れなくてもさ。あたしほどともなると、ユエで他者の心を読むって芸当も、できたりできなかったりよ?」
「嘘だろ……もう、なんでもありかよ……」
読心術? それってもしかして読心術ってやつか? いくらなんでも反則技だぞ。
信じられない思いでアオを見ると、彼女はまるで俺の心の声に答えるかのようにニヤリと笑った。こいつ……。だったらこっちは、心頭滅却するまでだ。
「ああもう、やめろやめろ。勝手に人の心を読むな。月見里は、別にそういうんじゃないから」
俺はなるべく声穏やかに、本当っぽく聞こえるようにそう言った。こういう事情がアオにバレると面倒なのは目に見えている。頼むから顔とか赤くならないでくれ!
「ふぅん。別にそういうんじゃない、か。あんた……意外にわかりやすくて可愛いわねぇ?」
しかしアオは、これみよがしにお得意の八重歯をちらりと覗かせる。……駄目だったか。
「まあ、あたしだって、特別色恋に長けてるわけじゃないけどさ……でも、あれはどう見たってあんたの片恋でしょ」
「片恋って言うな。だから違うって」
「ああいう、清楚で可憐でお淑やかー、なのがいいわけ? だったらあたしでもありでしょ? ほら、あんなお高くとまってない分、なおさらさ」
聞けよ。
そして何を言っているんだこいつは。さてはやっぱり淑やかの意味知らないな? ついでに清楚と可憐もかなり怪しいが、この思考を読心術で気取られても面倒なので、すぐに打ち切る。
「こんなに違うって言ってるのに……お前、しつこいぞ」
「あんたこそ、そんなにムキになることないのに。好きとかじゃないなら、じゃあ、ただ気になるから聞かせてよ。あのメスと初めて話したのは、その昔に街で、って聞いたけど?」
……もう本当、どこで聞いてやがったんだ。まさか午前中、ずっと俺はこいつに見られていたのだろうか。俺が怪訝な顔をして黙ると、アオはそれを黙秘の逃げだと思ったのか、途端にこちらへとにじり寄ってきて言う。
「あっ! あんた、もしかしてここで黙る気? いいとこなのに! 無駄よ。あたしがユエを使えばそれくらい――」
「わかった! わかった話すって!」
ああまったく! なんて面倒くさい兎なんだ。
ただ、ここまでダイレクトに訊かれると、それはそれではぐらかすのにも骨が折れるものだ。昔話くらいはしてやってもいいかもしれない、とそう思い始める。
俺は仕方なく、脳内にて時計の針を逆回転。忘れもしないあの日を思い返して話した。
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