第30話 諦めない心



『クリス』


 もう何度目になるのか分かりません。


 魔王の元へやってくる勇者様は、日に日にやつれていっているようでした。


 それでも欠かさずに、「姫を返せ」と毎日ここへやってきます


 一体、どんな執念が彼を動かしているのでしょう。


 私は恐ろしくなりました。


「毎回対応するのが面倒だ」


 何度か目になった頃。いい加減に魔王様が付き合いきれなくなったのかもしれません。


 その日魔王様は、他の魔物達もひきつれて勇者様の元へ行きました。


 魔王様からは大人しくしていろと言われてますが、私はどうしても気になったのでこっそり後をついていきます。


 勇者様は魔王様に戦いを挑まれたようです。

 しかし、今回も負けてしまったみたいです。


 魔王様が何やら倒れた勇者様に向かって、愚痴を述べています。


 けれど勇者様は聞く耳をもたずといったようで、しきりに攻撃しています。


 これでは話になりません。


 このまま膠着状態が続くのが良いはずありません。


 私は直接、勇者様とお話するべきだと思いました。


 一体何が目的なのか。


 彼が執着している私が問いかければ答えてくれるかもしれないと思ったからです。


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