第28話 優しい魔王様



 数日後。何だかんだあった私は魔王城の庇護下に入っていました。


 けど、面倒を増やしたという事でよく愚痴をこぼされています。


「書類がたまっているのに」とか。


「魔物の世話が残っているのに」とか。


 部下の人たちからは目につかない場所で、隠れてそれらの雑事をこなしているようです。


 魔王様によると「残忍な魔王像をとりつくろわねば、モンスターはついてこんのだ」という事らしいです。


 けれどそのイメージのせいで、統制の取れないモンスターが魔王に喜んでもらおうとして勝手な事を行ってしまうとも言っていました。


 本当は、後に引けなくなっただけで、魔王様も人間と争いたくなかったのかもしれません。


 そんな魔王様は「また勇者か」と、私を奪還しようとしてくるアルト様を毎回撃退してくれます。


 どうしてか分からないですけど、今の勇者様は弱体化しているらしいので、追い出すのは片手間にできるらしいです。

 それでも面倒は面倒らしいので、お世話になっている身として毎回愚痴に付き合うしかありません。


 私は小さくなって「すみません」と謝るしかない状態です。


「ふん、別にお前の為にやったわけではない。勇者達は倒すつもりだったからな、肩慣らしにちょっかいをかけられる事くらいなんて事ない」

「ありがとうございます」

「だから、お前のためではないと言っとるだろうが」


 それでも何だかんだ言って、私を守ってくれている魔王様には頭が上がらない。


 何だか勇者様と魔王様のやる事があべこべになっているような気がします。


「不束者ですが、しばらくの間よろしくお願いします魔王様」

「魔王を頼る聖女がどこにいる。それと誤解を招くような言い方をするな」



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