第20話 魔物はびこるダンジョン



 散歩が終わり、帰路についていると、ときおり人外の存在が目に入ってきます。


「ゴォォォ!」

「フシュゥゥゥ!」

「グルルルゥッ!」


 オブラートに包んだ表現をしてしまいましたが、誤魔化しがきかなくなってきたので、正直に申し上げるとそれは魔物です。


 オークやゴブリンやゴーレムなどが徘徊しています。


 彼等は鼻息荒くしながら、人間である私達に敵意のこもった瞳を向けてきていました。


 でも、襲い掛かってはきません。


 視線を投げつけてくるだけです。


「あの、勇者様。ときどき建物の中を徘徊しているあれは、何でしょう」


 とりあえず幻だという線もある。本物の魔物だとは思いたくないので、否定したい思いでアルト様に問いかけました。


 しかし、非情です。勇者様が。


「あはは、クリスティーゼ様、魔王城でも見ませんでしたか? あれは魔物ですよ。姫はお茶目なんですね」


 面白い事を言ったつもりはありませんんし、お茶目でも何でもありません。

 現実を直視したくなかったからあえて聞いたんですっ!


「どっ、どうしてモンスターがダンジョン内にいらっしゃるの?」

「大丈夫ですよ姫。勇者である俺が常に一緒にいるので、襲われたりしません」

「そうなんですか」


 聞いたのはそういう事じゃない。


 本当にどうやって連れてきたのだろう。


 この辺りにいるモンスターを適当に集めたわけではないらしい。

 地元の地域に住み付かない、特異なモンスターも見かけるので、どうにかして連れてきたのでしょうが。想像できません。

 

 脱出がまた難しくなってしまいました。


 これは、勇者様の傍を離れられないという事ですよね。

 いつまで私を監視してるつもりなんですか?


 期限ってあるんですか?


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