第18話 真実を語っているわけがない



「あのっ、勇者様。魔王から助けてもらったのはありがたいのですけど」


 一度は魔王に捕らえられていた私を助けてくれました。

 けれどその後、王様の所にも王宮にも帰してくれませんし、自分のお城に閉じ込めてしまうしで。

 第二の魔王か、魔王の後継者かになるつもりなのでしょうか。


「何かな? クリスティーゼ姫」


 私が勇気を振り絞って問いかけを発すると、アルト様は小首をかしげて麗しい仕草。

 

 そういった細かいしぐさも絵になるお方だけど、今はときめいてなどいられません。


 勇者様は、私が何を言いたいのか分からないという顔をしてます。


 天然なのでしょうか。

 いいえ、私は騙されません。


 私をこんな所に監禁するなんて、何か裏があるに違いないんですから。


「そろそろ、本当の目的を話してくださっても良いのではありませんか。私をこんな所に閉じ込めている、真の理由をおっしゃってください」

「本当の目的? そんなもの、まったく、これっぽっちも、少しも、ありはしないよ。私はただ、姫と一緒に穏やかに過ごしたいだけだ。こうして穏やかに二人きりの時間をすごしていたい」


 私は「嘘です」と言いたいのをぐっとこらえました。


 私にはたくさんの姉妹がいます。

 私以外の姉妹は、誰も彼もが美しくて聡明です。

 私などよりも、求婚するにふさわしい相手なら山ほどいるはず。


 他の全てを忘れてしまうほどの魅力なんて、私に備わっているわけがありません。


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