第16話 危険だらけのダンジョン



 おかしな様子の勇者様の元から逃げ出そうと決意した私ですが、脱出は思うようにいきませんでした。

 と、いうのも。


 私達がいる場所がダンジョンだからです。


「……」


 十メートル歩けば、横の壁から弓矢が飛び出てきたり。

 百メートル歩けば、床面が開いて落とし穴になっていたり。


 さらに百メートル歩くと、どこからともなく煙が発生して視界を遮りますし。

 苦心して一キロ歩いた頃には、同じような場所をぐるぐると周っている事に気がつきます。


「ネロ、今ここに貴方がいてくれたら、どれだけ心強かったか」


 分かりました。

 さすがに悟りました。


 私だけでは、これは踏破できない。


 頭の良いネロがいてくれれば、せめて話は違ったのでしょうけれど。


 魔王の元にいた時は、二人だった。

 だからなんとか頑張ってこれた。

 けれど今は一人きり。


 頑張って歩いても、まったく出口に辿り着く気配がない事に膝をついていると、背後から気配が。


「姫、ここは危険だよ。安全な場所に戻ろう」


 勇者様の声はどこまでも慈愛に満ちたものでした。

 だからこそ余計に怖い。


 お姫様一人にここまで手の込んだ仕掛けを作るなんて。

 一体どんな恐ろしい事を考えているのだろう、と私は震えあがるしかありません。


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