第12話 勇者の恋心



 そして、クリスティーゼ姫は俺に、「嫌なら逃げても良いんですよ」と言ってくれたのだ。


「世界中の人々が貴方を悪く言ったとしても、私は貴方の味方でいます」


 と、そう約束してくれた。


 俺はその時、心の底から彼女を眩しく思った。


 そして、彼女心の美しい、素敵な宝石のような人だ、とも思った。

 だから手に入れようと、手に入れたいと思ったのだ。


 彼女を手に入れるためなら、どんな困難な壁も打ち破れる気がした。


 かなうなら、この腕の中にずっと抱いていたいとそう思った。


 そこまで思ってやっと、彼女に惚れた事に気がついた。


 だから、その王女クリスティーゼ姫が攫われた時はいてもたってもいられなかったし、魔王の元から救い出した時は喜びの感情が溢れんばかりの状態だった。


 彼女以外の事など、何も考えられなくなった。


 彼女が無事ならそれでいい。

 彼女が幸せならそれでいい。

 他には何も望むまい。


 それこそが、俺の幸せ。


 けれど、彼女が俺の事を愛していてくれたと分かったら、歯止めが効かなくなった。


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