第13話 すれ違う二人



 だから俺は彼女を隠れ家であるダンジョンの最奥に連れてきて、決して誰かに奪われたりしないようにと、大事に大事に隠したのだった。


「クリスティーゼ姫、姫様。愛しています。世界で一番、貴方の事を、貴方だけを、愛しています。この目に映るのは貴方だけで良い。他の物などいらない」

「えっ? はっ、はい」


 腕に閉じ込めた宝石は、夜空にきらめく星のようでもあった。

 それでいて、冬の寒空に輝く太陽のように、優しい光で温もりをもたらしてくれる。


 俺の目の前で、照れて恥ずかしがる彼女の様子は何と愛らしい事か。

 言葉少なに頷いてくれる彼女の姿を、一秒たりとも見逃したくない。


 彼女以上の宝物など、この世界にはないだろう。


 勇者としての責務は果たした。

 だから、俺はもうただのアルトとして彼女と幸せになりたかった。


 クリスティーゼ姫ならばきっと、そんな俺の気持ちを分かってくれるだろう。


 帰るべき場所が他にもある?

 姫としての責務が残っている?。


 どうでも良い。


 きっと姫は俺の事を一番に考えてくれるはずだ。


 だって、俺は姫の事が好きで、姫も俺の事が好きに違いないのだから。


「姫、俺の気持ちを受け取ってくれるね。いつまでも一緒にいてほしい」

「えっ? ええ、まあ。(こっ、怖い。この人いったい何を考えているんだろう)」


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