第11話 孤独な勇者



 ただ一人で、世界中の命運を背負わされている事実に耐えきれず、潰れてしまいそうだった。


 それでも、修行にあけくれる日々は、まだマシだった。


 武闘大会で戦っている内も。

 だが、正式に勇者になった後からが大変だったのだ。


 会う人すべてが俺に期待してくる。


 会う人すべてが、成功を望んでくる。


 会う人すべてが、すがってきて。


 会う人すべてが、よりかかってきた。


 それらの感情が、とても重たかった。


 まるで呪詛の言葉を耳にしているようだった。


 そんな俺を救ってくれたのはクリスティーゼ姫だ。

 俺の最愛の人で、何よりも大切な俺だけのお姫様。


 世界平和、正義の象徴、魔王討伐。


 俺の人格を無視して、俺の平穏に過ごしたいという願いも考えられず、人々は勝手な幻想を押し付けるばかり。


 強く、在れ。


 気高く、在れ。


 凛々しく、在れ。


 逞しく、在れ。


 一挙一動が、見張られているかのようだった。


 この国の王から直々に魔王討伐を依頼された後は、毎日が息苦しくて、すべてを投げたしたくなっていた。


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