第9話 帰る事のない姫



 私はそんな日々の中で、毎日姫様を励ましました。


『姫様、私がおそばについています。きっと勇者様などが助けにきてくださいますよ』


 その影響か、姫様が自暴自棄に陥ったり、自殺したりするような事が無かったのは幸いです。


 きっと魔王は、そんな私の存在も計算されて、一緒に攫ってきたのだろうけれど。


 そんな私達は、やられっぱなしではありませんでした。


 脱走しようと思った事が何度かあります。


 計画を練るたびに、失敗しましたが。


 私達は知恵をひねって、部屋を抜け出そうと、お城を抜け出そうと、恐ろしい場所から抜け出そう考えました。


 しかし、魔王城の構造は複雑で、場内を徘徊する魔王の部下のモンスター達も強力だったため、全て未遂に。

 自力で脱出する事ができませんでした。


 しかしその代わり、仲間を集めて強くなった勇者様がやってきてくれたのです。


 頼もしい勇者様は、魔王を倒した後、私達を助け出してくれました。


 だから一時は、これで全てが解決するように思えました。


 けれど、それは間違いです。


 姫様が特別な力を使って、魔王を浄化した後、その姫様が勇者様に連れ去られてしまったのです。


 お城へ一度も帰る事なく。


 魔王の元から解放された姫様はなんと、今度は勇者様に攫われてしまったのです。


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