第8話 メイドのネロ



『ネロ』


 私の名前はネロです。


 アルケミシア王国の末の姫である、クリスティーゼ様のメイドをしています。


 ある日、大切な国や民達を守るための、聖なる力を得た姫さまは、危険な場所に連れ去られてしまいました。

 世界の破滅をもくろむ魔王によって。


 そんな危険な存在に攫われてから、半年が経過。

 私達は殺されていません。

 いちおう生きてはいました。


 聖女の力は、私達人類の切り札。


 しかし逆を述べると、魔王の切り札でもあります。


 おそらく、聖女さえ押さえておけば戦況はどうとでもなると思って、なめられているのでしょう。


 魔王は、聖女に手出しできない代わりに、閉じ込めておくことで切り札を無力化してきたのです。


 姫様と一緒に囚われてからも、魔王は頭を使ってこちらを妨害してきました。


 希望をもたせず、絶望もさせず。

 やけくそになって必死の抵抗をされないために、食事の量や住環境は、しっかりと計算されていました。


 餓死しないほどの食べ物は、最低限提供していましたし、牢屋も汚くなり過ぎないように気を使っていたようです。

 時々部下の魔物が嫌がらせを死に来ますが、それも命にかかわるものではありません、


 王宮に勤めるにあたって、ある程度訓練を受けていた私は、そのような状況でも平静を保てましたが、しかし、なれない姫様にはきつかったよう。


 魔王は、本当に絶秒なバランスをとっていました。


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