第7話 辺境の地へ



 大罪人も寄り付かない辺境。

 険しい山脈と、深い大海を超えた未開の地にとどりつきました。


 鬱蒼と生い茂る密林のその先。

 勇者様の隠れ家(?)居城(?)に連れていかれた私は、毎日勇者様にお人形のような扱いをされています。


 広くてキラキラしたお部屋の中で、ずっと。


 勇者様、勇者アルト様から愛をささやかれたり、髪の毛をとかされたり。


 あとは、甘いものをあーんとされたり、しまいには頬や額に口づけされたり。


 勇者様の膝の上か、横か。

 もしくは寝ころんだ勇者様の体の上か。


 いっ、いやらしい意味ではありませんよ?

 そういう事はなぜか求められていません。


 そうやって扱われるために、私は勇者様から離れようとするのですが、勇者様は必ずがっしりと私を抱きしめてしまいます。

 勇者様の、鍛えられたたくましい腕に閉じ込められる状況。

 本当なら胸をときめかせる状況ですが、今の私にはそうはできません。


 そして私を拘束した勇者様は「どこに何をしに行くのか言わないと解放しない」というのです。


 それでいざ、理由をでっちあげて苦心して離れてみると、勇者様は必ず私の後をついてきます。手をつなぎながら、ずっと見つめて。


 とても、怖いです。


 まさか、勇者様がこんな方だったとは。


 勇者様に熱っぽい視線を向けられるたびに、私の心臓は氷水に着けられたような心地になります。


 何度も何度も思う事ですが。

 本当に、どうしてこんな事になったのでしょう。

 

 私は、勇者様に笑顔を向けられながら、頭を抱えてしまいます。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る