脱出

燃え盛る炎。

小さな体で,壁に空いた穴から部屋の外へ出る。

人々はパニック状態で,逃げ惑い混乱している。

「ッッ!?おい!!実験体が脱走しているぞ!!」

すぐに見つかり,ブランの手を取り走り出す。

彼らは,数人で俺達を追いかけた。

実験室を通りすぎ,培養室を通りすぎ,

物置まで逃げる。

そこで,追い付かれてしまう。

「に...ぃッ...さん......」

不安と恐怖が混じった瞳で俺を見つめる。

「大丈夫。俺が守るから。」

科学者を蹴飛ばし,他の奴等に殴られる。

今のうちに,

弟だけでも逃げてくれれば。

抗い,抵抗し,時間だけが過ぎていく。

「!!出口...!」

ブランは俺の手を握り走り出す。

後ろへよろめき,頭から地面へ激突する。

ふと,背後の棚に積まれていた塗料が毛先に少しついてしまった。

「あ...ご...ごめんなさい...」

「今いいから。すぐに逃げるぞ!!」

棚を倒し,奴等が追ってこれないようにする。

そうして

走って

走って

走って

暗闇までたどり着いた。

もう,逃げ道はここしかない。

お互いの手を強く握り

闇の中へ飛び込んだ。

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