始まり

少しだけ,昔話に付き合ってくれないかな。

まぁ,話すのが苦手だから過去の映像を見せてあげる。




「ん......ぅ...」

目が覚めると,見知らぬ天井。

隣には同じ顔が一つ。

互いの手には枷がついていて,動きが制限されている。

それ...に,互いの片目が抉れて,義眼がはめられている。目の回りは赤紫色に腫れて,更に彼の首からはコードが繋がれている。

鈍い痛みが全身にはしる。

苦しくて,焼けるように痛くて,彼の手を握りしめる。

彼の名前は.........なんだっけ。

双子の弟なのに,思い出すことができない。

それに......俺も,俺の名前を思い出せない。

何でだろう。

思い出そうとする度,その部分だけ霧がかったように思い出せない。

「おに......ちゃ.........?」

弟が目覚めた。声は震えて,とても小さい。

「ここどこ...僕...確か...お家でパパとママの帰りを待っていて......」

彼は混乱し,頭がぐちゃぐちゃになってしまった。

俺は背中を優しく撫で,彼を宥める。

安心したのか,少しだけ平常心を取り戻したようだ。


それからしばらくして。部屋のドアが開いた。

そこには,白衣を着た大人がたくさんいたんだ。

「おはよう。エルト。ブラン。」

一人が口を開き,俺達を交互に見た。

彼らは俺のことを"エルト"と呼び,弟を"ブラン"と呼んだ。

「突然,こんなところに連れてきてしまってすまないね。まぁ,子供なら誰でもよかったんだ。」

「君達はまだ幼い。世間の闇を知らないから容易く連れてこれたよ。」

一人が近づいてきて,俺の首に何かを射した。

じわじわとその部位が焼けていく感覚に陥る。熱くて,声がでない。俺は,立つことも座ることも,寝ることすら苦になってしまった。

ただ,悶え苦しむことしかできなかった。

少しずつ,意識が遠退いていく。

「さぁ,ブラン。私達に協力してくれればお兄さんを助けてあげる。」


その声を最後に,俺の意識は停止した。

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