サプリメントとプチトマト

にんじんうまい

サプリメントとプチトマト



お弁当に入った、プチトマト。

いつも入ってる、プチトマト。

本当はなくてもいい、プチトマト。

今日もお飾りな、プチトマト。



昼休み15分前を知らせるチャイムとともに、最後に残ったプチトマトを一口で飲み込んだ。



****



部活が終わった夕暮れ。私は毎日特売日のスーパーに駆け込む。

外気を冷気が追い払って、怖いくらい明るい音楽の下、客達が今日も行進している。私は当然のようにプチトマトをカゴに入れた。その時、ふと隣に並べられたトマトが気になった。完熟トマト、2つ1パックで250円。


完熟トマトは、成長し切ったトマト。

プチトマトも、成長し切ったトマト。


ただ小さいだけ。


完熟トマトには成長段階の柔らかな小ささがあり、プチトマトにはこれ以上成長できない大人の、張り詰めた小ささがある。


私はどちらの小ささなのだろうか。

高校3年生。それは大学生目前、二十歳直前、宙ぶらりんな大人子供。

もし社会が私を小さい子供と捉えるならば、私はどちらなんだろうか。



「ただいま」

暗い部屋に電気をつけ、ビニール袋を掠る音が痛いくらい静けさをかき消した。母は仕事で毎晩遅い。それなのに毎朝私のためにお弁当を用意してくれていた。そしてそれには必ずあのプチトマトが添えられていたのだった。


台所に並べられた帯びたたしいサプリメント。母は忙しさのあまりサプリメントで食を済ませることが多かった。きっと母はサプリメントでできていた。



サプリメントとプチトマト。

プチトマトは大人トマトなのに小さいトマト。

サプリメントは万能なのに全く味のしないタブレット。

大人なのに小さい、万能なのにさみしい。



****



お弁当に入った、サプリメント。

いつも入ってる、サプリメント。

本当はなくてもいい、サプリメント。

今日もお飾りな、サプリメント。



最期15分前を知らせるタイマーとともに、彼女は残ったサプリメントを一口で飲み込んだ。

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