⑩冷たい月

 あの月を眺めた日の団子はとても美味しくて、もうずっと手作りの方がいいと思った。彼女の隣に永遠に居たいと、そう思っていたと今ならわかる。


 あの日の月は冷たい月だった。2人で作った団子と一緒にした話が、この世で1番恐れていることだったからだ。

 

もっと早くに求婚しておけば良かったのだと思ったが、あとで友人に聞いた話ではずっと前からの許嫁だったらしい。


 少し離れたところでは有名な企業のお嬢様で、初めて彼女の写真を友人に見せたときに驚いていたのを見て驚いた。

 初めから何も期待してはいけなかったのだとわかっていたが、それでも、それでも彼女が好きだった。




 青い月を月見していた部屋から見上げて、ゆっくりと立ち上がり、カーテンを閉めた。

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