18.中秋の名月
台所に滅多に入らない先生と一緒に団子を作っていた。
近所のスーパーには月見団子が売っていたし、もちろん和菓子屋にも売っていたが、今年は作ってみようということになった。
「耳たぶくらいの柔らかさでお願いしますね」
「よく使われる表現だが、なかなか難しいと思わないか」
「まあ、そうなんですけど」
「料理中に耳たぶを触ったら手を洗わないと汚いと思わないかい?」
「そうですね」
先生はこういう表現についての思考が好きだ。私などは全く思いもつかないことに突っかかっているから、理解に苦しむ。
小説家というのは言葉を扱う職業だし、そういう変な思考を持ち合わせているのかもしれない。
「このくらいか」
「そうですね、これで。あとは棒状にして、切ってそれを丸めます」
「案外簡単にできるものだね」
少しウキウキしている先生を見て、たまには一緒にこうして料理をするのもいいのかもしれないと思った。
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