17.順位
彼女がおつかいでいない間、無くなった金平糖を補充するのは自分しかいなくて、構ってくれる人間がいなくなった愛猫のクロがその隙を突いて机に上ってくる。
餌をちゃんと決まった時間に与え、何となく毎日遊んでくれている彼女のおかげで少し太り気味だったクロは普通の体型になった。
しかし、僕よりも彼女の方が上だと思っているらしきこの毛玉は、気が済むまで撫でてやらないと机から降りない。締め切りが割と迫っていて危ういのだが、そういう時に限ってこうなるのだ。
元はクロが彼女の立ち位置に居て、彼女はあっという間にクロに取って代わり、僕の中の2番目になった。それは金平糖の次にこの世で好きなものだという意味で、人間の中では1番好きであるということだ。
1番好きであるということを表すために何かしたかと言われれば、何もしていない。ただ僕の中の醜い感情が彼女を勝手に独占したがっているのは確かだ。理性的とはあまり言えない僕が、ない理性を総動員して大人ぶっているのを知られる訳にはいかない。
友人に嗤われたように、年齢的な観点から見れば僕と彼女では恋人と見るには少し無理がある。
色恋に全く疎いとかそういう訳ではないし、どちらかといえば奔放で経験値は高い、はずだ。その経験が果たして経験値に加算されるのかは不明だ。
刺激的な恋というのは創作においてはある種の麻薬のようなもので、起爆剤のようなものでもある。
そんな汚らしい考えを一瞬で消えさせる、玄関の戸を開ける音が聞こえ、優先順位も家庭内順位も1位の君に全ての感覚を集中させるのだった。
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