13.朝顔の
先生が買ってくれた浴衣は2週間より少し早く仕立て上がって、今日は受け取りに来た。
先生は暑すぎる今日は外に出たくないようで、私だけが行くことになった。帰りにアイスでも買おう。
「こんにちは~」
「こんにちは。こちらにどうぞ」
事前に電話で受け取り日時を伝えてあったのでスムーズだ。私と先生、2人分の浴衣がたとう紙に入っている。
私の分だけ試着だ。生地の時に着物風に巻き付けてもらうのとはやはり違い、テンションが上がる。
「この帯でしたよね。一緒にお買いあげいただいたのって」
「ですね。うん、やっぱり素敵」
先生と並んで歩くことを考えると、やはり少し大人びたものにしたかった。
何より、落ち着いた雰囲気の物を買うと長く着られて良いのだ。
「着物風に着ても違和感ないですから、いっぱい着てあげてくださいね」
「そうですね。あ、先生のは多分大丈夫だと思うので、何かあったら電話しますね」
今日は一応まだ勤務時間中なので、できるだけ早く済ませて帰るつもりだ。休みの日ならば1時間いることなどざらなのだが。
「じゃあ、今度また来ますね」
「はい、お待ちしております。ありがとうございました」
袋に入れてもらい、店を後にした。
「ただいま戻りました」
「おかえり。早かったね。もう少しゆっくりしてくるかと思っていたよ」
「一応勤務時間中ですし、早めにと思いまして」
「変なところで真面目だなぁ。アイス代は僕の財布から抜いておいてくれていい」
アイスを食べた事がバレていてい驚いたが、お言葉に甘えてもらっておいた。袋から先生の分の浴衣を取り出し、鏡の前に先生を立たせて着させた。
「先生の帯はこれでしたよね。うん、丈も大丈夫だし、良い感じです!」
「この色にして正解だったね」
「私のと並べると良い感じですよね」
先生の浴衣は灰色というよりは鼠色の良い生地のもので、黒に銀糸が入った帯と良く合っていた。
「髪の毛はどうされます?」
「うーん、決めかねているんだよ」
「少し結べますし、結んでおきません?」
「君の趣味が良くわかるねぇ」
先生は男性にしては少し長髪なので、後ろで結んだら似合うと思うのだけど。
「私は新しい簪買ったので、それをしていこうかなぁと。ふふ」
浴衣と同じ朝顔モチーフの簪がハンドメイド品であったために買っておいたのだ。届くのが楽しみだ。
このとき、先生が引き出しから何かを出そうとしていることに気がつけたら、何かが変わっていたのかもしれない。
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