④金平糖
金平糖を買っていた和菓子屋の袋がたくさんある部屋がある。
資源ゴミを出すのに最適な紙袋だったからだ。
その間に彼女が贔屓にしている呉服屋の袋もある。給金でちょこちょこと買っていたらしい新しい着物や小物を下げて帰ってくることもあった。
休みの日には浅草に行って簪を買っていたらしく、休み明けには新しい簪をしていることも多かった。
何でも、本当は呉服屋で雇ってもらいたかったが面接で落とされた翌日にあの助手募集の貼り紙を見つけたらしい。僕としては呉服屋から落とされていて良かった。
いや、良かったのかどうかわからないが、もう助手募集はしないだろうとあの時思った。金平糖の綺羅綺羅しい命を噛み砕いてきた僕への罰か、僕の心も砕けた。
一度でもいいから彼女に簪を送っていたら良かったのだ。友人から随分と若い女を助手にしたものだと散々笑われていたのだから、いっそのこと本当に笑われるようなことをしてしまえば良かった。
後悔などしても金平糖が盛られていた器が再びいっぱいになることはないのだと、最後の一袋を開けて虚しくなった。
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