7.春の吹雪
「おかえり」
桜が満開の春の日の午後。買い物に行っていた彼女が帰ってきた。
「金平糖たくさん買ってきましたからね?」
「ありがとう。・・・・・・これは?」
いつもの金平糖と見慣れない包み。
「あ、それは新商品だって、そこの息子さんから頂いたんです」
少し赤くなってモジモジしている彼女を見て気がついた。
「髪のそれは?」
黒く美しい髪にそっとある桜の花。
「これも、その時手に落ちてきた花を」
挿してもらったんです。やはり少し照れているようだった。
「そうか。あそこの桜も満開だったろう」
いやに心が冷えた。
「きれいでしたよ。先生も来れば良かったのに」
行かなくて正解だ。花吹雪で凍えてしまうところだった。
時折こうして自分は恋愛対象外なのだと認識してしまうのが、僕は嫌だった。
今日はもう原稿は手に着かないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます