7.春の吹雪

「おかえり」


桜が満開の春の日の午後。買い物に行っていた彼女が帰ってきた。


「金平糖たくさん買ってきましたからね?」


「ありがとう。・・・・・・これは?」


いつもの金平糖と見慣れない包み。


「あ、それは新商品だって、そこの息子さんから頂いたんです」


少し赤くなってモジモジしている彼女を見て気がついた。


「髪のそれは?」


黒く美しい髪にそっとある桜の花。


「これも、その時手に落ちてきた花を」


挿してもらったんです。やはり少し照れているようだった。


「そうか。あそこの桜も満開だったろう」


いやに心が冷えた。


「きれいでしたよ。先生も来れば良かったのに」


行かなくて正解だ。花吹雪で凍えてしまうところだった。

時折こうして自分は恋愛対象外なのだと認識してしまうのが、僕は嫌だった。

今日はもう原稿は手に着かないな。

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