5-1.氷山の一角

『氷のような部屋で抱き合い、互いの熱で溶かし合う』


友人と遅くまで飲んだ後、冷たい風に吹かれて偶然思い浮かんだ言葉だった。

家の中で暖かいのは暖炉があるあの部屋だけで、あとは全て寒いのだ。

前は気にもならなかった。


そんな部屋で僕の天使を抱いたらどうだろうか・・・・・・。

まだキスもできていないのに、と自嘲した。


きっといつの日か、何かに使うかもしれない。そう思い、いつもの様に手帳に書いた。


翌日、机の上から手帳が落ちることも知らずに。

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