5.3歳⑤
姉貴に裸で抱きつかれて、それに興奮してのぼせてから1日が経った。
今日はマリアちゃんと一緒に山菜採りに山登りをしている。
畑で育てるやつでも十分な量があるんだけど、それでもマリアちゃんが「適度な運動です!」と言って山登りをしながら山菜を採っていた。
あくまで山菜はサブ、メインは山登りらしい。だけどこの山すごいキノコが生えてるんだよな。
椎茸とかそこら中にあるし、食いたい(よだれ)。しかしこの世界では謎にキノコは嫌われてるんだよね。
大人曰く「あれは悪魔の植物だ、堕天使ルシファー様が地に降りて悪戯に人を死なせようと生やしたのがキノコだ。昔の人はそれを知らなくて食べたら死んでしまった。村で振る舞ったからその村は一日で全員死んでしまった」
なんて言われてるけど、いやたしかに毒キノコも存在するけど全部そうじゃないのよ?
そっか、この世界では毒のないキノコを求めた命知らずはいないのか。
まぁそうだな、怖いよな。知識がない中でどれが毒ありでどれが毒なしなのかは実際に食べていくしかないか。
まぁ俺は前世では仕事でキノコを販売する部署で働いたことあるから知識を持ってるから、俺が広めていくか。
「ねぇねぇマリアお姉ちゃん」
「なに? ユーリーちゃん」
「あれ美味しいから食べようよ」
俺が指で椎茸を刺すとマリアちゃんは驚いた顔をした、その後厳しい顔をして話した。
「いい? ユーリーちゃん、あれはね悪魔の植物って言われて食べたら死んじゃうんだよ?」
「それは毒キノコだったからだよ、毒のないキノコもあるよ?」
「キノコ?」
マリアちゃんは可愛らしく首をかしげた。
「うん、あれキノコって言うんだよ?」
「キノコって聞いたことがないけど、あれは本当に危ないものなのよ……って、あっ、コラ!ユーリーちゃん!?」
俺はトコトコ走っていってキノコを素手で取った。
「でも本当に美味しいんだよこれ?」
「どうしてそれが分かるの?」
「だって前に食べたから」
「たっ?!食べたっ!?」
マリアちゃんは大変驚いて身体中を触ってきた。
「嘘でしょ?!か、身体は大丈夫なの?!」
マリアちゃんガチで心配していた、なんか嬉しいな……
「ホントに大丈夫だよ、ほらこれ採って家で食べよ。僕これを美味しく食べる方法知ってるよ?」
そう言って俺は椎茸どんどんカゴに入れていった。マリアちゃんはただただ呆然と口を開けて見ていた。
***
「ただいまー」
「ただいまー……」
マリアちゃんは疲れた様子で頭を抱えていた。
「おかえり、ってどうしたんだマリア?」
「あのね、お父さん……ユーリーちゃんったら悪魔の植物を食べたみたいなの……」
「なっ!?悪魔の植物を食べた!?」
マイクおじさんは急いで俺の元へ走って来て、身体中をパタパタ触った。さすが親子、反応がほぼ一緒だった。
「これはキノコって言うんだよおじさん、今日採ったキノコは椎茸っていってね、とても高級なものなんだ」
「そんなことはどうでもいい!それより、それを食べたのはいつだ!?」
マイクおじさんらしくない、酷く焦った様子だった。
「え? 確か一月前くらいかな?」
「ひ、ひとつき?」
「うん、あの時が煮てスープの出汁にしたよ。とてもおいしかった!」
「あれがどういうものなのか分かっているのか!?」
「それ食べて死んだ人がいたって話?」
「あぁ、そうだ」
「たしかにキノコには毒キノコがあるけど、毒じゃないキノコもあるよ。多分食べた村人が全員死んじゃったって話しは採ってきたやつがたまたま全部毒キノコだったんだよ」
「毒がないやつもあるのか?」
「なんでユーリーちゃんはそんなの分かるの?」
しまった、こういう質問をしてくるか。返答はどうしようか……
「見たらなんとなく分かる」
苦しい言い訳だった。
「ユーリーよ、悪いことは言わないからもうあれを食べないでくれ」
マイクおじさんはキノコを食べるのを頑なに認めない。まぁ信じられない気持ちは分かるよ。
知っている子供が世間では危ないと言われてるものを持っているとハラハラする気持ちは、でも……キノコ、椎茸は美味しいから食べて貰いたいんだよねぇ……みんなに。
俺はそんなことを心から願っていた。
***
秘境、魔境と言われて思い浮かぶわのは、年中霧に覆われた湿地帯、もしくは人がそこで生活するどころか、通行するのにも困難な環境を思い浮かべるであろう。
常人なら目的地へ向かうまでの道のりで、いくらそこを通れば最短距離で着けると言われても、命を落とす可能性は大きいなら、安全で遠回りをするだろう。
命あってこそ、人とは生きる意味があるからだ。
自らの生に意味を見いだし、どの様に生きるのか決めるのは自分、その生き様を客観的に評価するのは後に生きる人類。
この世とはその様で出来ている。
しかし、目的の為ならば命すら投げ出す輩もいる。だがそれも人の生き様の一つだ。
この世で最も恥ずべき行為とは、自らの生を嘘偽りで虚飾し成り立った柱のない塔に棲むものだ。
柱がない為、外面でのみ成り立っている為、当然ながら力を軽く加えるだけでそれは簡単に崩れ去る。
だから私は今まで、恥じない生き方をしてきた。
時には泥水をすすいだりもした、しかし私には目的がある。約束の地平均向かうといった立派なものだ。
そこへ向かう前にかの者、モーセと共に山頂で十戒を神から授かった。
そこから目的地へと辿り着きさえすればよかった。しかし、同胞の一人と逸れてしまった。
約束の地へとそのまま赴くのか、それとも遠のいてもその同胞を探しに行くか。
彼は私の親友である、名はヨシュア。彼が私たちに教えてくれた、ヤハウェを信じれば救われると、必ずいつの日か。
彼は突然として現れた。
そして彷徨っていた私達へ道を示してくれた。生きる意味を与えて、そこでは好きに暮らして良いと。
家を持ち畑を耕し、家族も持つ。たったそれだけのちっぽけな夢は叶うと。
彼の放つ言葉の一つ一つに、諸行無常の響きが私には聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます