3.3歳③

 し、死ぬかと思った……


 俺は肩で息をするほど死にかけていた。ま、マジでやばかった……ぜぇ、ぜぇ……


 そんな俺を見てマイクおじさんは微笑みながら近づいてきた。


 「あれ? 少しやり過ぎちゃったかな……? あはは……」


 顔がマジでやばいのを見るとマイクおじさんは急に申し訳なさそうな顔をした。


 「い、いえ。ぜんっぜんッ、大丈夫です!」


 なんとか強がって胸を張ろうとするも、身体は既に限界が来ていて足が産まれたての子鹿のようにプルプルしていた。


 気を抜けばへなりと座り込みそうだ。


 「はは、そうは見えないかな……とりあえず座って休もうか。」


 さりげなく椅子を進めてくれて俺もやっと一息つけた。地面に座らないかっけ?で、できればなるべく座りたくない…


 さっき寝っ転がったのは不可抗力だ、剣で打ちのめされたらそれは暫く起き上がれない。割とガチで脳みそが揺れてる気がした。


 これ脳震盪だったんじゃないの?


  ……違うか、そのあとピンピンしてたからな。


 「はい、ユーリー君はココアでいいのかな?」


 マイクおじさんが椅子に座って休んでる俺にココアを勧めてくる、俺は大の甘党だ。もちろんココアは好きなのだが、かなりの頻度で飲んでいる。


 うちの村はカカオが沢山取れる、それからチョコレートやココアへの加工を行う工場もかなりある。ある意味ココアやチョコレートを飲み放題、食べ放題の村だ。俺だけでなく、子供は甘いものが基本好きなので天国のような村だ。


 しかし飽きるといった人も当然存在する、それは大人たちに多い。この村で20年30年暮らすと見たくなくなってくるらしい。


 運動後ってかなり疲れるし、なんか頭がボーッとするからココア飲むと意識がマシになる。いつも飲んでるのを見たのか、それを覚えてくれたマイクおじさん……


 あんたそのさり気ない心遣い……あたいは好きだよ。


 てかマイクおじさんってマジでイケオジなんだよね。見た目はマリアと同じ金髪で寝る時以外はずっとワックスでオールバックにしているようだ。


 それといい感じに履いてる顎髭が口髭と繋がっている。それももみあげまでも繋がっていて、髭も金色だ。


 見た目ちょっといかついけど、それとは逆に態度は常に一歩引いて慎むような感じ。そのギャップは凄すぎる。


 見た目オレオレ系なのに、態度が柔らかい。そして子供に優しく好かれやすい、さらに気遣い気配りが良く出来て村ではかなり信用されている。


 それこそ奥さんが行方不明になったと知らせが入って娘と家に引きこもった時は元気を出してもらおうと、村のみんなで色々相談して常に誰かが家を訪ねていた。


 しかし最近は俺の稽古を出来るほど元気になってよかった。


 村のみんなも一安心。


 俺はココアに口をつけた。


 「あつっ!?」


 「わぁ!大丈夫かい?」


 熱々のホットココアを、息で冷ましをするのをすっかり忘れて思わず口をつけてしまって、あまりの熱さにココアをこぼしてしまった。


 それに気づいたマイクおじさんは慌てて服にこばれたのをタオルで拭いてくれた。


 「あ、ごめんなさい地面汚しちゃって……」


 汚してしまった地面を見て申し訳なく謝っているとおじさんは頭を撫でてくれた。


 「大丈夫だよ、こんなの拭けばいいし。それよりユーリー君は大丈夫? 火傷してないかい?」


 「は、はひ」


 いやはひってなんだよ、はひって。マイクおじさんの対応が神すぎて思わず男の俺がときめいちゃったよ。おじさんどう責任取るの?


 「あ、そうだ。マリア〜!」


 おじさんは何かを思いついて娘のマリアを呼んだ。


 「なにー? おとーさん」


 マリアが2回から落ちてきた、しかしなんだ…そのぉ……薄着過ぎないかい? マリアさん、ちょっとおじさん心配なんだけどそれ、誰かに美人でエロすぎたせいで攫われない? 大丈夫?


 マリアはしたはとても短い短パンで、上はブラジャーだけだった。


 あ……やばいこれ、まだ子供の身体だけど興奮しそう……


 自分のイチモツが固くなってないじゃ確認するために触ったが、よかったまだふにゃふにゃだった。


 まだ子供の身体だからかな?


 「ユーリー君ココアこぼしちゃって服も汚れたし身体もベタベタしてるから、お風呂に連れていきなさい。」


 え? お父さん娘さんと一緒に僕お風呂入っちゃっていいんですか?!


 「はーい」


 あらやだ、娘さんも二つ返事で同意してくれた!


 この時期って思春期になって恥ずかしくならないですかね?いや、俺がガキだから気にならないのか。


 そういえば俺まだ3歳だったな。


 そんな訳で、全国の男子諸君!俺はお風呂を堪能してくる!綺麗なナイスバディのお姉さんと!!


***


 ぐふふ、今の俺は天国にいる。なんせ今世の俺は今はまだ3歳だからな、年上のお姉さんと一緒にお風呂に入っても文句は言われない。


 俺は今は3歳児だからな!ははは!!


 だからあんなことやこんなことをマリアちゃんにしちゃいます。ぐへへ。


 そんなことを考えているとマリアちゃんが自分の着替えの服と俺の分の服も一緒に持って来てくれた。


 「ユーリーちゃん、ちょっとバンザーイしてみて。」


 「え?うん。」


 言われた通り両手を上げてバンザーイのポーズを取った。するといきなり服を脱がされた。


 「きゃっ?!な、何するのマリアお姉ちゃん!」


 さっきは卑猥な事を考えていたが、急に服を脱がされた俺は思わずびっくりして身構えてしまった。


 俺は…実はヘタレなんだ。


 心の準備がないまま、い、いきなり脱がせてくるとはマリアちゃんはなんてイケナイ娘なの?!


 おじさんマリアちゃんをそんな娘に育てた覚えはありません!ぷんぷん!!


 「お風呂入るなら服を脱がないと入れないでしょ?」


 「あ、そうだったね。」


 「ふふ、ユーリーったらちょっとおかしいね。でも、そんな所がかわいい……」


 ん?あれ、マリアちゃんの目がちょっとやばいよ?これ俺お風呂場で襲われちゃうんじゃないの?!


 さ、サンバディ〜ヘルプミー!プリーズ!!


 「さ、汗かいたからお風呂入って綺麗にしよっか。」


 ちょっと目がやばいマリアちゃんにお風呂場に手を引かれて俺はそこで、、、アッーーーー!!??


***


 ふぅ、なんとか一息つけて今はお風呂に浸かってる。まったく……まさかマリアちゃんがあんなイケナイ娘だったとは……。


 頭を洗ってくれた後、身体は自分で洗うって言ったら「ダメ、お姉ちゃんに全て任せなさい」と言われて後ろも前も洗われた。


 しかしその手つきがとてもいやらしい、身体をソーッと撫でるように洗うなんて……お陰で変な声沢山出しちゃったじゃないか、もう!


 まったくなんてエロい娘なんだ、けしからん!


 それにしてもいいお湯だ……はぁ、極楽極楽……。


 「ふふ、ユーリーちゃんったら気持ち良さそうにお湯に浸かっちゃって、お姉ちゃんも一緒に入ります!トウッ!」


 ドバァッと音をたてて水飛沫もたてながら、マリアちゃんもお風呂に飛び込んできた。


 しかしマイクおじさんの家は大きいな、うちの家も現代の一般家庭の一軒家くらいの大きさだけど、マイクおじさんの家は現代の豪邸といった感じだ。


 そして家が大きかったらもちろん、全ての部屋も大きいし、リビングも広い、そしてお風呂場もとても広かった。


 すげぇ……。


 お風呂から上がってマリアちゃんとマイクおじさんのおうちでのんびりしていると外で子供達が集団でいるのを見つけた。


 「またか……よしっ」


 そこの集団に囲まれていたのは一人の気の弱い男の子、名前はヨシュア(Joshua)と言う。数日前に教会の前で倒れていたところを保護された。


 保護された時はとても痩せ細っていたが、今はちゃんと食事を取れてるから少し肉がつき始めてマシな見た目になっている。


 村の子供たちは物珍しそうに遊びに誘ったがヨシュアはあまり乗り気でなかったため、なんだこいつつれないな的な感じが教会の孤児院の子供で広まり、いつしか仲良くしようとしたものはいなくなり余所者としていじめるようになった。


 親父やシスターはもちろんこれを止めたが、目の届かないところもある。それで更につい最近発覚した事実があり、どうやら彼は魔法が使えないらしい。


 正確には魔力を持たないった。多分この世界で初めて生まれ落ちた魔力を帯びない人間の誕生だったのだろう。それで家族は使えないやつと認定して捨てたのだと大人たちは予想した。


 余所者プラスに魔力を持たないってのが更に彼をいじめたりするに与えする子供たちの理由になったのだろう。


 子供とは大人の影響で性格が形成されていくもので、中には個性といった周りに影響されない子供もいる。しかし基本は大人のやってる事を見様見真似をしてしまうのが子供だ。


 周りと違うからといった理由で差別の対象となる、魔力がないとわかった時の教会の反応も“よくなかった”。


 魔力なしが露見して以来、いじめを神父やシスターが見て見ぬふりをしているのも増えてきた。


 あわよくばその子が嫌になってここから逃げ出して勝手に死んでくれとでも願ってるのかの様に。


 神の前では皆平等ですと主張する教会の大人たちですら、普通の大人と変わらない。


 俺の“嫌いなタイプの大人たち”だ、勝手な都合で平気で子供を巻き込んで、傷つける。


 内容あるものをと口にする割に、自分達は虚飾で積み上げた階段を登っている。いつか、それが破綻すればいいのにッ……。


 ……おっとイケナイ、暗い雰囲気になっちゃったな。俺は前世ではイジメされなかったものの、“イジメられる人の心情がなんとなく分かる”。


 俺の中で、イジメは許されない事の一つだ。更に、困ってる人がいたら助けるのが俺の性分。


 そしておれは彼を助けるためにその集団に飛び込んだのだった。

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