ノイズキャンセリング
私の幼馴染は恋愛をしない。
何故か尋ねると、「学生の恋愛なんて、長続きするわけがない」と言う。
彼の言っていることは正しいと思う。学生の恋愛なんて、ステータスでしかないだろうし、将来性を見据えて付き合う人間なんてまず、いないだろう。ほとんどの人間は『恋』という都合のいい言葉を利用して充実した学校生活を手に入れる。
もちろん友達だけで学校生活を構成するのは簡単だと思う。だけど女子は交際相手がいるというだけで、人気者になれるのだ。このシステムが確立しているからか、女子には、お試し付き合いなんてのもあるけど、今ではお手軽恋愛として都合よくつかわれている。私は自分の気持ちが曖昧な内に付き合おうとは思わないし、お試しなんて意味が分からない。
それに私の気持ちはずっと一人に向いていた。恋愛しないなんて言ってるくらいだし、時間はかかるだろうけど、いつかちゃんとこの気持ちを伝えたい。
* * * * *
「俺、付き合うことになった」
いつも通り一緒に下校していた時、彼は表情を変えることなく、淡々と話し始めた。
話を聞くと相手は隣のクラスの子で、向こうからの申し出だったらしい。一度は断ったものの、翌日やっぱり諦められないと再度告白され、押し切られてしまったとのこと。
「……そ、そうなんだ、よかったじゃん」
なんとか絞り出せた言葉だった。
突然の告白に、始めは衝撃が勝っていた。けれど、徐々に形容しがたいトゲトゲした感情の渦に飲まれていった。考えがごちゃごちゃになって頭が回らない。今の自分の気持ちが分からない。
「でさ、これからはその子と帰ることになったから一緒には帰れない」
彼は私の心境なんてお構いなしに追撃してきた。そりゃそうだ、彼が鈍感なわけじゃない、私が一度も気持ちを伝えなかったからこうなったんだ。でももう限界だ。
耐えきれなくなって、私は彼に何も告げることなく、背を向けて走り出した。
「おい、待てって」
わからない、何も分からない、分かりたくない。
拭っても拭っても溢れ出る涙を必死にこらえながら、うしろの雑音が聞こえなくなるまで、がむしゃらに走り続けた。
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