物語を書く練習<短編>

あくばね

最高のバディ

僕が初めてそれを口にしたのは小学五年生の調理実習だった。

初めての料理、仲の良い友人らと作るということもあって、家庭科の時間を心待ちにしていたのを今でも覚えている。

授業開始のチャイムが鳴り、クラスを六分割した計六グループでそれぞれ作った。

僕の班は女子二人、男子三人の五人班で、女子は顔見知り、男子はみんな仲の良いメンツだった。

まずは普段から母親の手伝いをしているであろう女子二人が慣れた手つきでキャベツをみじん切りにしていく、キャベツを切り終えると

「これすごくなーい??」

両手を腰に回し、自慢げに語る女子二人に多少のウザさは感じたものの、女子の切ったキャベツのみじん切りは綺麗に切れていた。

サッカーを習っているAの

「俺らもやろうぜ!」

という掛け声を合図に男子陣も作業に取り掛かった。

Aはひき肉に餃子の素を加え、よく練り合わせる。

Aが練り合わせている間に、僕はにらとしいたけをみじん切りにする。

初めて調理前のしいたけを生で触れ、こんなものが本当に美味しくなるのか疑問に思うくらい、にらもしいたけも正直臭かった。臭いに耐えつつ、にらとしいたけを切り終えたら、Aのひき肉とキャベツ、にらとしいたけを一緒に混ぜ合わせる、この担当は少し小太りのBが行った。

Bが混ぜている様子が余程面白かったのか、後ろで女子二人がクスクスと笑っていた。

女子二人が笑う理由はなんとなく分かった、隣から見たBは額に汗水を垂らしながら一生懸命混ぜ合わせていた姿がテレビで特集されてたうどん職人に見えたからだ。

Bが混ぜ合わせ終えると、いよいよメインイベント、水餃子の皮で具を包む作業だ。

この作業は本当に楽しかった。みんな自分の思い描く最高の餃子になるように包んだ。

上手に包み合わせる女子、力いっぱい込めすぎて皮を破るA。

「やらかしたー先生ぇー」

大声で担任を呼ぶAにはクラスのみんなが笑っていた。

みんな皮を包み終え最後の仕上げ、たっぷりのお湯を沸かし、沸騰させた鍋に餃子をくっつかないように入れていき、もう一度沸騰するまでゆでる。

餃子をゆでている最中、鍋から湯気と共に水餃子の美味しそうな香りにはみんな興奮した。

「各班餃子が浮き上がっているか確認して、浮き上がっている班は餃子をすくってくださーい」

担任が家庭科室中に響きわたる声で伝えると、みんな餃子をゆでてる鍋を一斉に凝視した。

しばらく見ているうちにプカプカと餃子が浮き上がってき、喜ぶ子や驚嘆する子、中にはきもちわるがる子もいた。

そんな風にみんな驚きつつも、自分の茶碗に餃子をそれぞれよそい、食事タイム。

初めて口にした水餃子は、想像を絶するくらい美味しかった。

ゆでられ、プニプニした皮を噛むと中からほろほろと美味しいひき肉と香りのいい、にらとしいたけが口いっぱいに広がる。班のみんなも笑顔で食べていて、ただただ幸せだった。

初めて食べた水餃子だったが、この調理実習をきっかけに、今で家で水餃子をつくるようになったし、今ではご飯の最高のバディだ。

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