第10話 私に任せなさい
女子と二人でゲーセン。こんな嬉しい事はない。嬉しいハズなのに、今はテストを受けてるようだ。
「まずは水嶋君の実力が見たいので、オンラインマッチでやってみて下さい。後ろから見てますので。それと、選曲は私が致しますね」
水嶋は指定された曲を、一曲目、二曲目とクリアしていく。聞いたことの無い曲だったが難易度が低かったので何とか着いていけた。
そして、ラストの曲は、今、水嶋を最も苦しめている難題。
激しいギターのイントロに、流星の如く降り注ぐノーツの
「お疲れ様でした。結果発表といきたいところですが、ここでは何ですし、近くのカフェにでも行きましょう。安心して下さい。先輩が奢ってあげますから」
重めの前髪、黒縁の眼鏡から覗かせる微笑みにドキリとさせられる。口角の上がった柴田の可愛らしい笑顔に、水嶋はまじまじと見入ってしまう。
「どうかしましたか?コーヒーとか苦手でしたか?」
「い、いえ。今日は何から何まで、ありがとうございます」
水嶋は深々とぎこちなく頭を下げると「どう致しまして」と一言。水嶋は柴田に牽引されるようにして、ゲーセンを後にした。
しっとりとしたモダンジャズが流れる店内。水嶋はコーヒー、柴田は豆乳ラテを注文する。
「単刀直入に申し上げて、まず変な癖が付いてます。まず、コレを直していきましょう。それと同時に混フレ対策もしないといけませんね」
「混フレ?」
「混同フレーズの事です。同時押し、交互押し、スライド、大回転、乱打と色々と考える事があるのですが、二つ以上のメロディーを同時に処理する能力が必要になります。その為にも、タイミングは重要なのです」
「はぁ」
「ピアノでいうところの、左手で伴奏を引いて、右で主旋律を引く様なものでしょうか」
「まぁ。何となく、わかります」
「中級レベルになると、当たり前の様に、この混フレが登場しますので対処が必要です。」
この人は何者なんだ?水嶋は柴田の外見とは似つかわしくない早口な熱弁に圧倒される。
「それでも、私が思ってたより叩けていたので驚きました。頑張っているのですね」
「は、はい。打倒ミカエルですから!」
柴田の熱弁に圧倒され、水嶋の口から、麗しの姫君の名前、いや、プレイヤーネームが
「ミ、ミカエルですか!」
「部長も知ってるんですか?ウチの制服を着てたんですけど、あんな可愛い子、見た事ないんですよね。さすがに、あれだけ可愛いと目立つと思うんですが……」
「かっ、かわいいですか。可愛い子。かわいいだなんて、まさか。可愛いとは」
何故か部長は赤面し、顔を伏せている。
「なんで部長が照れてるんですか?」
「いや、そんな、恋バナみたいの私、抵抗無いと言いますか、あの、その、今日のところは失礼します」
動揺する彼女は新鮮で、何処か年上なのに可愛らしく思えた。
迂闊にも水嶋は、なぜ柴田が音ゲーに対して、そこまで詳しいのか聞くことを忘れていた。
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