第2話 いとまのまえに

 ライブ映像を映しているディスプレイを横目にぼんやりしているとエレベーターから音がして静かなフロアにまた男がひとり。

「和久井さん、今日も盛り上がってますね」

「ああ」

「この構成にしてからメンバーも何か掴んだみたいでイキイキしてますね」

「ああ」

「あれ、何かあったんですか。気分が沈んでますね」

 パンクしたタイヤで運転しているくらいに続かない会話、口数の多い声の主はマネージャーの静川。閑とした間をとって支配人は開口した。

「数字は全く問題ない。今までにない好成績なのだ。しかし、しかしだ、ぜんっぜんワクワクしないのだよ!」

 マネージャーは気前のいい応えが思いつかなかったため5階にあるカフェで話を伺おうとした。ちなみに彼が第一に思ったのは、

(この人の考えることはよう分からん。鬱か!?)

である。

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