アカノの探求と糾弾

【宝珠】…それは特定のダンジョンでランダムでドロップされる宝物の中でも極小確立でドロップされる宝物の事である


特定状況下でドロップされるのか、純粋に極小確率なのかも判断されていない


ただ特別視されるだけの性能があり、それを1つ売却すれば一生暮らせる位の売却値で取引されている





そんな【宝珠】を3人にかけると言うのは、どの様な意味があるのだろうか?


私はそんなことよりクロノの生死、所在が知りたい気持ちが一杯で急かせてしまう





「ギルドマスター、それは3人に何か罰則を与えるという事だろうか?私はそんな事より早く弟の事を知りたいのだ!!」





そう言うとルナエラはこちらを向きながら少しだけ笑う





「その為の【宝珠】使用じゃよ。アカノ、彼らが何を囀ろうが我々は虚実判断が本来は出来ん。今回使用する【宝珠】は『トゥルーシーカー』という物でな、簡単に言うと嘘を見破る事が出来る【宝珠】じゃ。」





それを聞くと同時に3人の表情は硬直する。


何かを隠しているのはこの時点で間違いないと私は確信した。





「だがな、その様に高性能な【宝珠】なだけにデメリットもある。先ずは起動させる為の必要魔力が異常に高い事じゃ。まぁ燃費が良くはないんじゃよ。もう1つは正しい事を伝えてくれる訳ではなく嘘を見破る事が出来るという事。燃費が高い上に尋問に時間を要するという事じゃな。最後にコイツを使用する際には相手にそれを宣言するという制限がある。軽々と使うと人間関係が悪くなってしまうのも困りものじゃ…」と得意げに話し始める





「まぁ、実はもう1つあるんじゃけどな。」とボソッと呟いた事は私にはどうでも良い





ローエルはそれを聞いて明らかに狼狽した口ぶりで反対する


「ちょ、ちょっと待ってくれ!!俺は【勇者】だぞ!!ギルド所属といえ国から派遣されている特別な存在だ!!俺が嘘を言っていないとなったら国からギルドへ何らかの罰則が与えられるぞ?!」





それを聞いたルナエラは事もなげに返答する


「先程お前が言った通り、お前は国から派遣されているとは言えギルド所属なのじゃ。そのマスターである私が行使する事自体、何の問題もあるまい。それで万が一国が何か言ってくる様であれば…まぁ、最悪賠償さえ払えば何とでもなる。」





「うっ!!」





「まぁ、私の予想ではお前たちは嘘を言っている。飽くまで仮説だが、ヴァンパイア討伐部位を持ち帰らずにメンバーが死亡と報告してきたことを加味すると、『ヴァンパイア討伐に失敗し、メンバーが死亡した』と考えるのが妥当かの…」と彼女は続けて追い打ちをかける





それを聞きながら私は殺気を3人に向ける


「…おとなしく【宝珠】の前で真実を言え。もし拒否したり、逃亡したりすればどうなるか、分かるだろう?」





「あ、あれは仕方なかったんです!!あんな強いヴァンパイアがいるなんて思いませんでした!!」


不意にラミアが叫びながら哀願する


それを聞いたローエルが「おい、ライア?!」と言うも「ローエル…もう隠せません。正直に伝えましょう…魔力を異常に必要とする【宝珠】を使わせる手間をかけさせる訳にはいきません…」と伝えてコチラに向く。





「…皆さまの仰る通り、私たちは虚偽報告を行っておりました。今から真実をお伝えしたいと思います。正しくは、ヴァンパイアは若くありませんでした。それ所かあの場所には【真祖】のヴァンパイアが滞在されていたのです…」





「「「な?!!」」」


この言葉にギルド内にいた全員が驚愕の表情を浮かべる


【真祖】は種族の始まりであり、神に等しい存在…それこそ神話やおとぎ話でしか聞いた事がない…





「私たちは【真祖】の威圧だけで動く事が出来ませんでした…その中でクロノさんだけが真祖に切り掛かり、煙玉で煙幕を作って私たちを逃してくれたのです。私たちは愚かでした…そんなクロノさんの命を賭した行動をSS級であるというプライドと保身の為に偽り報告してしまった…」





そう言って涙ぐむライアを見て私をいたたまれない気持ちと絶望感が襲う


クロノは命を賭けて【真祖】から仲間を助けようとした。


本当に【真祖】が相手なのであればクロノの命は無いだろう…





「くっ…」


思わず無念の感情が吐露する


そんな私の隣にいるルナエラは真剣な表情で口を開く





「ライア…」





「勿論、私たちが虚偽報告を行った事に対しての罰則は甘んじてお受けします!ただ、あの【真祖】に対しては誰も向かってはいけません!!あまりにも異質で強大な存在です!!神と同一視されるのも納得できます!!」


ライアは涙を流しながら訴えかける中ギルド内には静寂包まれた…





「ライア…」


ルナエラは再度、真剣な表情で口を開く





「ライア、今の報告には虚偽があったのぉ…」


その声には怒気が孕んでおり射殺すような視線を彼女に投げかけていたのだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る