クロノの最悪な災厄




【嘆きの森】のほぼ中心部にあるであろう洋館は、それなりに築年数も経過している様な趣を出していた


だが、かなり広大な広さになっており、ヴァンパイアが住み着くまで居住していたのは貴族の中でも高位の人だったんだろうという事が簡単に想像できた





洋館の前に到着するとかなり重厚な門が構えられていたが施錠等はされていないので簡単に敷地に入り込める


敷地を通って扉の前に到着すると、ローエルが無遠慮に扉を開こうとする





「ま、まって!扉を開けると罠が作動するかもしれないよ?!」





僕は敵地にも関わらず何の警戒もせずに扉を開けようとするローエルを止めた


普通に考えれば若いとはいえヴァンパイア、人間が自分を討伐しにやってくるという知能は当然にあるのだが、そんな僕が3人は気に障った様だった





「…クロノ、それはお前が弱いからだ。俺くらい強い人間になると罠くらい何の問題もなく防ぐことが出来る。」





「あんたねぇ~ザコの自分目線で物事を決めつけないでくれる?


こんな事で警戒している内にヴァンパイアが逃げたらどうしてくれるのよ?!」





「クロノさん、慎重なのは良い事ですがあなたのそれは臆病者と一緒です。


お2人が仰る通り罠レベルであれば問題無いですし、ヴァンパイアに気づかれでもしたら相手が逃亡する可能性もあります。


黙って私たちについて来て下さい。」





「……分かったよ。」





3人とも、自分達が強者だからと相手を侮っている


確かに3人は僕と比べると圧倒期に強い


相手が若いヴァンパイアであれば多少の罠があったとしても戦闘でも問題ないだろう


ただ、それは飽くまでも若・い・ヴ・ァ・ン・パ・イ・ア・で・あ・れ・ば・だ





ギルドの依頼でも若いか老いているか明言されていない


若いヴァンパイアだろうというのが依頼内容としても正しい


でなければB級依頼ではなくS級依頼にならない


もしこの扉に罠が仕掛けられているのであれば通常知能の若いヴァンパイアの可能性が高い


もし仕掛けられていないのであれば、知能が低い若いヴァンパイアか、罠・を・仕・掛・け・る・必・要・が・無・い・圧倒的強者が相手なのかのどちらかだ





そんな僕の警戒心等関係が無い様にローエルは無造作に扉を開いた


ギギッッギギ…と金属が擦れる音がして扉が開いていく





「ほら見ろ、お前みたいに弱い奴の意見通りに物事はいかないんだよ」





ローエルは罠が無かった事を気分良く伝えてくる


でも僕の頭はより警戒値を上げていった





扉を開くと外観よりも綺麗なフロアがあった


フカフカで赤くて長い絨毯が敷かれており、天井にはシャンデリアが幾つもある


古いはずの屋内は埃1つもない様に豪華さと重厚さが融合されている





(これはマズイかもしれない……!!)





僕の警戒値はMAXになる


知能の低い相手がここまで美麗な環境である筈ない


壊せばそのまま放置するモンスターが殆どだ


にも拘わらずここまで豪華な造りや雰囲気を維持している相手は、少なくとも人間並みの知能やセンスがあり、且つ敵に対して罠を仕掛ける必要もない相手という事になる





僕が警戒している間も3人はフロア中心まで進んでいく





「よし!!今からヴァンパイア探索に移る!1部屋ずつしらみつぶしに探していくぞ!!」





「うん「はい」」





2人は返事し、武器を構えようとしたその瞬間


「それには及ばんよ…」と声がした





「誰だ?!!!」





ローエルは剣を構えて声のする方に身体を向ける


瞬間、フロア中心部にある階段先にある大きな扉がゆっくりと開きだす…





出てきたのは30歳前後だろうか?銀髪で金色の瞳の男性が出てくる


着ている衣装は黒の外套に上品に金色の刺繍が施されており高級そうな装飾品を付けている


肌は青白いが滑らかな肌その容姿を際立てさせた





コツッコツッと足音を響かせながら階段の手前まで進んでくる


僕らを見下ろし、一瞥しながら彼は返答する





「…誰だ、とは中々無遠慮だね。君たちが我が家に盗人さながら屋敷に入ってきただろうに」





そう言いながら腕を組む所作1つ取っても品がある





「うるさい!!人族の敵ヴァンパイアめ!!一端の人間の様な振りをするな!貴様がヴァンパイアだろうがSS級の我々には敵わない!今ここで終わらせてやる!!」





そう言ってローエルは駆け出し、ヴァンパイア目掛けて剣を振りかざした!!





「ふん…色々と言いたい放題してくれる。言いたい事は多々あるがSS級?君たちがかね?人間のランク基準値は下がったのかねぇ~…」


そう言いながらローエルの剣を事もなげに片手で受け止めた





「なっっ?!!!!」





ローエルは受け止められた態勢のまま驚愕する


それはそうだろう、今まで現存パーティー最高ランクのリーダー、ましてや【勇者】の称号をもつ彼の斬撃を片手で受け止められるもの等存在していなかったのだから…


僕の身体が恐怖で泡立つ…考えられ得る限り最悪の部類だった





「あぁ、そうか…君たち全員でSS級なんだね?だったら全員で試してみるがいい。私も折角出向いたのだ。少しくらいは楽しみたいからねぇ~」


そう言って無造作にローエルを剣ごと放り投げながら言った





「ば、馬鹿な?!!俺の斬撃を受け止めるだと?!若いヴァンパイアはB級でも討伐出来る筈だ!!」





ローエルは驚愕の余り剣を構えるのも忘れて男性に対し叫ぶ


それを聞いた男性はキョトンとした後に楽しそうにクックッと笑いながら言った





「確かに若造であれば今の斬撃は中々厄介だがね…そうか、私は若く見て貰えているんだねぇ~。


残念ながら私は若いヴァンパイアではないよ。というより、年老いたヴァンパイアですら無いよ…


『真祖』と言えば分かるかな??」





そう伝えられた言葉は僕の考えられるだった…


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