アカノの居ない依頼
「クロノ遅いぞ!!さっさと動け!!」
僕の追放問題から11日後、僕は今ローエルとヴァリア、ライアと共に依頼を受けて【嘆きの森】の中を歩いていた。
姉さんは2日前に個人への指名依頼が国から出て来ていない
依頼へ向かう際に何度も心配そうな顔を僕に向けていたのが忘れられない
僕らは冒険者なので姉さん1人がいない場合でも依頼を受けて生活する事が当り前だ
ただ先日にあんな事があったばかりだから依頼は受けてパーティーとして行きたくなかったけれども、ローエルの「少しでも修行をしないといけない」という言葉や、ヴァリアの「荷物を持ってもらわないと困る」という言葉、ライアの「クロノさん自身が成長してお姉さんを少しでも安心させてあげましょう」という言葉に流された
僕らが受けた依頼は指定ランクS級依頼、『ヴァンパイアの討伐』だ
この【嘆きの森】を進んだ先にある屋敷にヴァンパイアが住み着いているので、それを討伐して欲しいという内容
ヴァンパイアは魔族の中でも稀少種であり中々存在が確認できない為にギルド側でもあまり詳しい情報は無い
だが、聞いた話によると
・魔力は人間の十数倍
・身体能力も人間の十数倍
・吸血して配下を増やしていく
・知能は人間と差異が無い
・若いヴァンパイアであればB級でも倒す事が出来る
といった内容だった
今回のヴァンパイアは年齢が不明の為にギルド側がS級依頼としたとの事だった
確かに若いヴァンパイアだと思ってB級依頼で出して実は年老いた実力者のヴァンパイアであったなら、相手側に戦力を補強させるだけではなくギルドの信頼も損なう
ただ昔にヴァンパイアは人間に絶滅近くまで追い込まれた為に魔族の中でも稀少種となった為に、最近住み着いたであろうヴァンパイアが年老いたヴァンパイアである可能性は薄いのだそうだ
「い゛っっっ!!」
少しでも成長したいという考えと、若いヴァンパイアであれば手伝える事もあるかもしれないと思いながら荷物を持っていると足に激痛が走る
「あんた何様?!ローエル様の激励を無視しているのよ!!あんたみたいな荷物持ちにさっさと来いと言って下さっているのよ?!すぐ返事しなさいよ!!」
「…ごめんなさい」
返事をしなかったのは悪いとは思うけれども、【拳剛】の称号持ちから攻撃される程ではないんじゃないかな?と思うけど文句を言うと、より状況が悪化するので何も言えない
「あぁ!あんた本当にイライラするわね!!」
ヴァリアはそう言いながら自分の傍にある大木に拳を打ち付けると、ミシミシと言いながら大木が傾いていった
ドォーーンという大きな音と地面が振動を聞きながら、先程は彼女なりに手加減してくれたんだな…と間抜けな感想が頭によぎる
「ヴァリア!!こんなモンスターの多い場所で何をしているんだ?!!」
「ヴァリアさん!!この様な場所でモンスターに気付かれる様な事は止めてください!!」
ローエルとライアが同時にヴァリアを責め立てる
ヴァリア自身も不味いと感じたのか「ごめ~ん!クロノが余りにも鈍くさいからイライラしちゃって…」と両手を合わせて謝る
「クロノさんも周りの雰囲気を読んで対応してください!敵地の真ん中で味方の神経を逆撫でさせるなんて考えられない事ですよ!」
ライアはそう言いながら前方に振り返った
謝罪しても相手がイライラした行動により自分が怒られるよいう理不尽さに今更ながらこのパーティーに必要なのは姉であり、荷物持ちの自分は相変わらず不要と思われているんだなと思うと辛い
「あぁ…あんたの所為で怒られるし手の甲は擦りむく…ほんと最悪。」
ヴァリアの言い回しにも、やりきれない気持ちにはなるが確かに手の甲に血が滲んでいた
この程度ならと思い初級回復魔法をかけてあげると彼女の機嫌は良くなり
「余り意味ないけど、ホンの少しだけ役立ったわね」
そう言いながら荷物を持っている僕を放ってドンドン先に進んでいった
目的地につくまでにヴァリアが大木を倒した所為か、ブラッドウルフ、ワーベア、血吸い蝶、グレイトモス等のモンスターが僕らに襲い掛かる
僕は僕なりに持っていた鉄の剣で必死にモンスターを倒していくが、当然の様に3人程の戦果は挙げる事が出来なかった
長かった【嘆きの森】を突き進んだ先に古い洋館が見える
「ねぇ、あの前方に見える建物じゃない?!」
そうはしゃぐヴァリアに対してローエルは剣の柄を握りしめながら「そうだな」と相槌を打った
ライアはおもむろに全員を見つめながらハッキリと伝える
「ヴァンパイアですが、物理攻撃には極端に強いという特徴があります。
相手の弱点は光属性、炎属性とギルド側の情報にありましたのでローエルさんは光属性を、ヴァリアさんは相手をけん制しながら足を止める攻撃を、私は炎属性の詠唱を行いますのでその様な方向性でお願いします」
僕は当然の様に戦力に数えられていないので、要所要所で味方を回復させるサポートを行うようにしよう…
3人で頷きながら洋館の扉を開いた…
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