第25話 最強の敵?
道がわかれる毎に使い魔を出して捜索して進む事3回。
ふっと付近が明るくなった。
蛍光灯の灯り、クリーム色の廊下、木目だが合成素材っぽい床。
片側には壁と扉が並び、片側には窓と棚が並んでいる。
そんな廊下だ。
近くの部屋の番号を読む。
S510号室とS509号室。
S509号室の先の廊下正面に扉がある。
おそらくこの扉の向こうが閉鎖病棟なのだろう。
遙香がいるS501号室は事前におぼえた見取図ではこの先。
なお人の気配は不自然なくらいに感じない。
かつて組織から来た連中と戦った際と同じだ。
「行くか」
先輩は頷き口を開く。
「先導をつける」
行く方向を探した際に使用したのと同じ人型の使い魔が3体出た。
まずは人型が、そして俺達が歩き始める。
人型が廊下の正面にある扉を開く。
ドン!
強烈な音とともに中央の使い魔1体が倒れた。
扉の向こうにはあの顔に翼がついた不気味な化物。
「黒狼!」
俺が召喚した狼型使い魔5体が化物に飛びかかった。
1体は敵化物の電撃を受けて消えるが、残り4体が化物2体を食い破る。
扉を抜けたその先、廊下と扉、反対側に窓が並んでいる。
その先に場違いな黒い修道服を着て黒い帽子をかぶった男が立っていた。
こいつが敵だ、一目見てわかる。
「……Panem nostrum quotidianum da nobis hodie;et dimitte nobis debita nostra,sicut et nos dimittimus debitoribus nostris;et ne nos inducas in tentationem;sed libera nos a Malo.Amen.」
奴の台詞が人けの無い廊下に響く。
どういう攻撃をしてくるかはわからない。
でも遙香はこの先にいる。
だから俺は一歩前に踏み出す。
ビリッと電撃が出した足に刺さった。
瞬間的に足を引っ込める。
「
男がつぶやくように言う。
知らない言葉なのに意味がわかる。
「そこをどいてくれ。俺は遙香を取り戻す」
「
「俺は掠われた妹を取り返しに来た」
「|Non possum ego a puer prophetiae.《預言の子は渡せない》」
「それは使い魔。会話は無駄」
緑先輩がそんな事を言う。
使い魔なのか。
本物の人間と気配も魔力も存在感も変わらなく見えるのに。
だが緑先輩がそう言うならその通りなのだろう。
なら遠慮はいらない。
「極冷氷弾!」
建物や病院の施設に被害が無さそうなうちで最強の攻撃のひとつを連射する。
だが男の手前で氷弾は弾かれた。
氷弾に込められていた魔力が霧散する。
「黒狼・極!」
さっき呼び出したより一回り大きな黒い狼の使い魔を2体召び出す。
これが俺が出せる中でも最強の使い魔だ。
黒狼2体は男に飛びかかる。
だが男のすぐ手前で黒狼が跳ね返された。
まるで男の前に壁か何かがあるようだ。
それならば。
「メジェド様改!」
支部襲撃の際にも使った使い魔を改良したものを5体。
目だけが描かれた白い絞りのないテルテル坊主風の使い魔は、それぞれ男の方へ近づき、ある一点で止まる。
どうやらそこに壁らしきものがあるらしい。
メジェド様改5体はその壁の1点めがけてそれぞれ超高熱線を発射。
目に見えなかった壁が赤熱した。
「極冷氷弾!」
熱で白く輝いた部分を俺の魔法で穿つ。
見えなかった壁にひびが入って、崩れ落ちていった。
「
まだ余裕がありやがる。
そう俺が思った時だ。
「解析完了」
緑先輩が呟く。
同時に男の姿が薄れはじめた。
「O!」
みるみるうちに男は消え失せていく。
「向こうの世界でもほぼ同時に今の使い魔を破った。残るは……」
ふっと前に何かが出現する。
さっきの男と全く同じ姿。
「無駄。解析済み」
瞬時にその姿がかき消えた。
どうやら同じタイプの使い魔だったようだ。
「もう使い魔は使用できない。だから本人が出てくる筈」
「それが今度の敵か」
「
俺でも先輩でもない男の声がした。
同時に強烈な風圧で後方へ飛ばされる。
咄嗟に風魔法を前後に展開して俺と緑先輩を保護。
前方に男が出現している。
姿形そのものは先程までの使い魔と同じだ。
だが流れ出る気配や魔力が違う。
おそれくこれは本物だ。
「黒狼・極!」
一度引っ込めた2頭の黒狼が男へ飛びかかる。
「
男の手前ではじき飛ばされる。
先程から出したままのメジェド様・改が目から熱線を発射する。
だが今度は熱線は途中で何かに吸い込まれるように消える。
メジェド様・改は更に近づいていく。
光線が消えた処まで近づいて……
バン!
爆発するようにして消滅した。
「|Absoluta defensionis.《絶対防衛》」
奴が無表情のままそう呟く。
「極冷氷弾!」
俺も攻撃を放つ。
だがメジェド様・改が消えた位置で熱線と同じように消える。
痕跡も残らない。
「
やはりあの場所で吸い込まれるように消える。
はじき返されもしないし爆発もしない。
魔獣とは違い分析も出てこない。
とにかく俺が出来る攻撃魔法を試すしかないようだ。
「
「
病院施設の被害にはある程度目を瞑って出した極大魔法すら通じない。
何かないか、奴に通じそうな魔法は。
あと茜先輩はどうしたのだろうか。
この辺で合流すると思ったのだが。
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