第23話 組織への対策
「それで結局何がどうなったんですか」
放課後。
準備室で茜先輩に聞いてみた。
「前に阿比古の図書館から出た際に敵を動けなくした魔法があっただろう」
それはおぼえている。
「方位魔術でしたっけ」
「ああ。あれの応用を緑がこの学校全体に仕掛けたんだ。あれより数倍大規模かつ面倒なものをな。どうやら敵さんはこの学校に突場の支部を襲った者がいるのではないかという事で調査にやってきたらしい。だが魔法で関係ない人間を眠らせたところで緑が罠を作動させた。それに気づいた敵がかろうじて開けてあった出口から逃走したという訳だな」
「でもそれだとこの学校が怪しいと逆に思われませんか」
「思っても問題は無い。どうせ情報は取れないようにしてあるしな。それに此処以外にも何カ所か同じような魔法を仕掛けてある。心配はいらないだろう」
でもちょっと待てよ。
学校が駄目でも……
「俺達の家なんかは大丈夫なんですか」
家で就寝中に襲われたりとか、家族が襲われたりしたらまずい。
「安心しろ。既にその辺も対策済みだ」
「どうやってですか」
少なくとも俺は対策をしたおぼえはない。
「この部活を開始する時点で緑が認識阻害の継続魔法を私達3人にかけている。具体的に言うと私達3人をその意思に背いて調査しようとした場合、認識阻害の魔法が起動する仕組みだ。尾行に対しても書類調査に対してもこの魔法は有効だ。だから孝昭を敵が発見して倒す為には、魔道書がある場所や攻撃目標となる支部等で待ち伏せして倒すしかない」
「なら何故この学校に目を付けたんですか」
「目をつけたというよりしらみつぶしに学校を当たっているだけだろう。もしくは向こうでも魔法で犯人像を絞るなんて事をやっているのかもしれない。幸い向こうには緑のような知識系魔法の使い手はいないようだけれどな」
そういう事か。
それにしてもだ。
「そういった事まで対策済みなんですね、最初から」
「最初から組織相手に戦うつもりだったからな。用心にこした事は無い」
「元々孝昭を誘ったのもその為。私達が活動した結果、孝昭も仲間と判断されて襲われないように」
「まあ結局は私達と同じ組織の敵になってしまったけれどな」
そうか、そっちの配慮の方がむしろ先だった訳か。
「ところで今日も見物の連中は来るのか?」
茜先輩にとってはそっちの方が問題のようだ。
「今日は来ないと教室では言っていましたけれどね。昨日運動場で横になったせいで制服の洗濯が大変だったみたいですから」
「男子の制服なんてスラックスを洗うだけだろ」
確かにそうだし俺も最初はそう思った。
だがそれは認識が甘かったらしい。
「それはそれで面倒なんですよ。団地住まいとかだと夜に洗濯機を回せませんし」
「それもそうか」
この辺は持ち家が多いからどうしても気づきにくいのだ。
俺も教室で言われるまでは気づかなかったけれど。
「それじゃ今日は心置きなく練習をするとしよう」
そんな訳で俺達3人でまたグラウンドの隅へ。
俺達が行くと運動部の皆さんがそそくさと片付けに入るのが申し訳ない。
今週だけなのでとりあえず大目に見て欲しい。
もっともその辺気にしているのは俺だけのようだ。
まあ別に俺達が使うのはグラウンドの隅だけなので、他の運動部が何をやっていても問題はないのだけれども。
「それじゃ今日は私と孝昭で模擬戦と行くか」
「あまり無茶な攻撃はしないで下さいよ」
「使い魔同士で戦わせれば問題無いだろう」
先輩は片手剣を構えた黒い剣士を召び出す。
「ならこっちは数で行きましょう」
昨日試した狼型を5体出す。
あとは人型マッチョマンを1体出して昨日考えた鎧と剣を装着させてみよう。
こんなものかな。
「それでは行きますよ」
「ああ」
俺の使い魔はやられた際のダメージ逆流を防ぐため、基本的に自律型。
対象を指定して出した後は自動だ。
まずは狼型と人型で先輩が出した剣闘士を取り囲む。
剣闘士の背後にいた1体が攻撃をしかける。
足下を攻撃して爪で引っ掻き、剣闘士の足が動く前に逃げる。
次に反対側の1体がやや高めに飛びついた。
だがそれは剣闘士の剣で払われる。
だがその隙に人型が近づき剣を振りかざす。
「なかなかやるな。1体ごとの魔力は低くても数で攻める方法か」
「格上の相手にはこれがいいかと」
今のところ先輩の剣闘士相手にはいい感じで戦っている。
俺の使い魔の目的は相手を倒す事が目的ではない。
時間稼ぎだ。
「ならパターンを変えてみよう」
剣闘士が急に動きを変えた。
回りに関係なく一気に前進。
剣を振りかざし、俺の出した人型へ向けてふり下ろす。
人型は剣闘士の剣を剣で受け止めようとする。
だが剣にかかっている魔力の差で剣が両断された。
そのまま人型は両断されて消える。
しかしその隙に狼型が4体、剣闘士を襲った。
結果、剣闘士も食いちぎられて姿を消す。
「なかなか上手いな、この連携は」
「人型は今ひとつですけれどね。この場合は相打ち狙いで攻撃に出るのが正解だったようです」
「よし、次も同じ状況で行こう」
模擬訓練の経験はそのまま次に出す使い魔に反映される。
だから回数を重ねるごとに強くなる筈だ。
動き方だけではなく武器や使い魔の大きさ、体型まで徐々に改良されていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます