第21話 俺の強化試行とお邪魔虫

 平和なのはいいことだ。

 そう思った時代が俺にもありました、そういう奴だ。

 どういう事かというと、本日の放課後魔法訓練だ。


「おっと、今のはいい爆発だね。レ●ドマンの特撮よりよっぽど派手だ」

「そんな16ミリ低予算番組と比べなくてもいいだろ」

「今の氷の技、威力はあるのでしょうが演出がいまいちでごわす。せめて両手を水瓶の形に組んで『オー●ラエクスキ●ーション』と叫んで撃ち出す位はして欲しいでごわす」

「俺は『オー●ラエクスキ●ーション』より『ホーロド●ースメルチ』の方が好きなんだが」

「ねえ、薔薇の背景の技はまだなの?」

 そんな事を話しながら俺達の魔法練習を見物する奴がいるのだ。

 無論内海も森川さんもいるけれどそれだけではない。


「どうも気になるんだが、あの連中はいったい何なんだ?」

 茜先輩の台詞に仕方なく答える。


「男子漫研と女子漫研の一部だと思います」

「それが何でこんな処で魔法の見物なんてしているんだ」

「漫画の世界を実写の映画で撮りたいので、特殊効果の代わりに魔法で何とかできないかと見学しているらしいです」


「無視推奨」

「だな」

 茜先輩が小さくため息をつく。


 確かに俺も何だかなという気がしないでもない。

 何せ本気で練習しているので、ヤバい魔法もガンガン使っている。

 魔獣とか使い魔なんかも出しまくっているのだ。

 野球部の連中なんか既に練習をやめてグラウンドから逃げ出している。

 だのに漫研の連中は平気で俺達のすぐ背後でスマホやカメラを構えているのだ。

 こいつらには危機感というものが無いのだろうか。


「万が一の事があったら危ないですから、離れた方がいいですよ」

 一応そう声はかけたのだ。

 しかし駄目だった。


「だが断る」

「当たらなければ問題ない」

「俺は俺が立っている場所にいる。 それ以外の何処でもない」

「見せてもらおうか。魔法研の攻撃魔法の性能とやらを」

「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ」

 とかなんとか言って結局そこに居座ってしまったのだ。

 気にならない訳ではないが、取り敢えず無視するしかないだろう。

 

 さて、俺自身が病院で使えそうな魔法と言うとやはり使い魔だろう。

 建物が壊れたり他に被害を及ぼすような魔法は使えないから。

 対人用で効果的なのはどんな使い魔だろう。

 そう考えて思い直す。

 相手がどんなタイプか実際に対戦しないとわからない。

 だから多様なタイプを作れるようにしておいた方がいい。


 まず最初のパターンは腕力と耐久力が強力で、魔法は使わないタイプ。

 体型はマッチョマンタイプでいいだろう。

 ただし速度重視でやや小柄に。

 デザインはイメージを簡単にする為に黒一色の人型でいいだろう。


「おお、何か出たでござるよ」

「雑魚戦闘員っぽいタイプね」

「やられるとキーッとかイーッとか言って倒れると見た」

 外野うるさい。


 あとは犬型、いや狼型なんてどうだろう。

 かみつき、飛びつき、ひっかくなんて攻撃を主にした高機動型。

 壁としては使えないけれど相手への牽制とか集中力をそぐという意味ではなかなか有効だと思う。

 イメージは狼を思い描けないから大型犬。

 足が長く胴が細く、鼻先がちょい長めの奴。


「おっと、黒ラブでござるか」

「状況的に見て狼じゃないかしら」

魔狼フェンリルならやっぱり銀色よね」

 雑音がうるさいのは無視。

 あとはどんな使い魔がいいだろうか。


「ここで『俺はガンダムで行く』というのはどうでござる」

「いや変身だ。変身ベルトのバックルに何かキーアイテムを装着して……」

「男の娘魔法少女なんてのもいいかも」

「赤射蒸着!」

 外野の意見を気にしてはいけない。

 気にしても訳が判らないものもあるけれど。


 でも変身はともかく自分を強化するというのは方法論として悪くない気がする。

 たとえば相手の魔法攻撃を防ぐ鎧。

 防護魔法を展開するより自分に密着させた方が魔力も少なくて済むのではないだろうか。

 ある程度動きやすいよう、全身すっぽり型ではなく各部各部という感じで。

 空いている場所もそれぞれ魔法で防護している形式にしてと……


「出たな、暗黒聖闘士ブラックセイント

「どうせなら黄金聖闘士ゴールドセイントとまで行かなくても青銅聖闘士ブロンズセイントの方が」

「なぜそこで白銀聖闘士シルバーセイントを抜かすでござる」

「だって活躍あまりないでしょ、白銀聖闘士シルバーセイント魔鈴マリン以外は基本やられ役じゃない」


 だから俺は漫研の為に戦っているわけじゃない。

 おっと奴らは無視するんだった。

 それでは次は武器だ。


 あとは武器だな。

 実際には魔法で主に戦うが、接近されたら面倒だ。

 それにそれっぽい武器があれば相手への牽制にもなるだろう。

 剣がメジャーだけれど間合いを考えたら槍だな。

 そうは言っても槍で強そうなものなどなかなか思い浮かばない。

 仕方ない、長い剣にするか。

 魔法武器だから重さは軽く出来る。

 だから出来るだけ長く分厚いのを……

 

「それは剣というにはあまりにも大きすぎた。大きく分厚く重くそして大雑把すぎた。それはまさに鉄塊だった……」

「ドラゴンころしね、まさに」

「なら装備も『鋼鉄製の義手』と『狂戦士の甲冑』にしないと……」

「でもそこまでやると体型が駄目よ。もっと大きくなくちゃ」

 本当になんなんだ漫研連中こいつら。

 そういった怪しい批評はどこから出てくるんだ。

 最初は無視できていたが、いいかげんウザくなってきた。


「そろそろあの外野、黙らせていいか」

 茜先輩からそんな台詞が飛んでくる。

 どうやら先輩も同じ気持ちのようだ、

 なおこの台詞は魔法で漫研連中には聞こえない。


「あまり手荒な方法でなければ」

「ならお試し兼ねてやってみるか。羊たちの沈黙スリープ!」

 そのまま倒れると頭を打ちそうなので、さっと風魔法で支えてやる。

 無事全員横に倒れお休み状態となった。


「最初からこうしておけば良かったですね」

「ああ。それじゃ練習を続けよう」

 さて次は何をやろうか……



 

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