7話

 私の案件は速やかに児童相談所に報告され、私と父は離れ離れになった。だが、それでめでたしめでたしとはいかないのが現実だ。何せ狭い村での話である。父親の外面を信じている人間が圧倒的に多い。ほとんどすべてと言っても良かっただろう。そしてそれは、児相の人々も同じだった。私は1ヶ月で父の元に返された。そうして私の身に何が起きたのかは……説明せずとも分かるだろう。以前の私であれば受け入れた。これが普通の状態だったから。生まれて死ぬまで私は父のおもちゃ。寧ろその為に生まれてきたといっても良いだろう。諦めていた。希望なんて持ったことがなかった。だけどあの日。あの日私に飲み物をくれた優しい男。名刺に印刷された名前の下にボールペンで付け足された『相澤鳴海』の四文字と、電話番号。父が長時間不在にする日を探し、ほとんど死んだような気持ちで11桁の数字を押した。言いたいことはひとつだけ。「たすけて」。

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