第36話 その3
放課後、クラスのみんなは、いつも通り帰宅やら部活やらで教室を出ていく。
いつもならあたしもダッシュして帰るのだが、何となく残って、最後まで教室にいた。
何かが引っかかった。しかしそれが分からない、たぶんカンのようなものだとは思うけど、それがモヤモヤして、帰る気分になれなかった。
ぼーっと、散り散りに帰るみんなを見ていると、ひとりの男子と目があった。あわてて目を逸らして帰っていく男子は、たしか
いちばん前の真ん中あたりの席だから、あまり話した事はない。だからあたしはよく知らなかったけど、今の様子だと、向こうはこっちを知っているみたいだった。
タカコなら、どういうコが知っているかも知れないけど、あいにくもう部活に行ってしまっていない。
いつの間にか教室には自分しかいないと気づいて、慌てて帰ることにした。
オーツチのことは、明日にでも訊くことにするか。
しじみをお迎えすると、途中でたてはが追いかけてきて、一緒に帰る。
しじみにシュシュは学校の規則でつけれないから、腕に着けていると話すと、いいよと言ってくれた。
なんて出来た妹なんだろう、弱冠4歳にして気配りできるこの賢さ。
あたしのぉぉぉぉ、妹はぁぁぁぁ、世界ぃぃぃいちぃぃぃ一!!!!!!
うん、もう認めよう。あたしは妹萌えだ、妹萌え属性だ!!
なんかちょっと拗ねているたてはの機嫌をとりながら帰宅すると、いつもの家事をはじめるのだった。
両親もはやくに帰ってきて、久しぶりに夜も一家団らんを過ごしていると、スマホに着信があった。究からだ。
リビングから離れて、電話に出る。
「もしもし、どうしたのこんな時間に」
「データの集計が出来たんだ。今から家に来れないか」
ええ!! もう出来たの!?
すぐ行くと言うと電話を切り、お母さんに究のところに行ってくると伝える。
「こんな時間に?」
「すぐ戻るから」
返事も待たずに、あたしはサンダルを履くと、家を出て真正面にある究の家に行き、呼び鈴を鳴らす。
玄関が開くと、制服姿の究が迎えてくれた。
「こんばんは。まだ着替えてないの?」
「さっきまで学校にいて、帰ってきたばかりだからな。上がってくれ、両親ともいないから遠慮はいらない」
「また研究調査旅行なの」
「ああ、帰ってくるのは来週かな」
「食事と洗濯と掃除はどうしているのよ」
「家政婦さんが週2ペースでやってくれている」
究の両親は共に学者で、よく家を留守にする。
お邪魔しますと挨拶すると、そのまま彼の部屋へとすすんだ。
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