第37話 その4

「それにしても早かったわね。レポート用紙の量からしたら3日くらいかかると思ってたのに」


階段を上りながら、先に上がる究に話すと少々つまらなそうにこたえる。


「生徒会の書記長と会計長のおかげだな。投書の方はすでに時系列に並べられて、クラスと被害内容ごとに類別されていた。僕はそれを再チェックしたあと、小生意気な加藤のメール内容をそれに基づいて集計したんだよ」


つまり生徒会のおかげで、半分くらい時間短縮できたのか。

さすが特殊クラスのトップチームというべきか、くそっ!


「どうぞ」


久しぶりに究の部屋に入るが、相変わらず面白味が無いくらいシンプルである。だが見る人が見れば、こんなに面白い部屋はないだろう。


なぜなら、このシンプルな部屋にある家具やアイテムは、最新機器のオンパレードなのだ。

究は如何に効率よく動くかについては、こだわりがある。ハンガーにかけて入れておくだけで殺菌されクリーニングされる物とか、音声で家電を動かす物とか、そんなのだらけなのである。


そんな部屋だから、来客用の椅子なんてものは当然無い。

さっさと勉強机の前に座る究の後ろに立つしかなかった。


PCを立ち上げると、集計ソフトで表を映し出す。


「これが集計の結果だ。分かるかい」


「わからん」


こちとら並みの脳ミソを1個しか持っていないんだ、頭の良いヤツは凡人に解るように説明しろや。


ふうとため息をつくと、究は表をプリントアウトすると、画面を折れ線グラフ表示に換えた。


「その表をグラフにしてみた。縦軸が被害件数、横軸が日にちだ」


起点から徐々に上がっていたグラフが右にいく程カーブが急激に上がっていた。


「最近の被害数がスゴいね、こんなにもあるんだ」


「データによると5月10日から始まっているな。あげはの組からだ。それから徐々に件数が増えていき、6月に入ってから急激に上がっている」


「え? じゃあウチのクラスが最初なの」


「このグラフからするとな。ところがクラス事の被害数にすると違う結果が出る」


画面が棒グラフ表示となり、各学年各クラス事のグラフになると、ウチのクラスはそんなに被害届が出ていないのだ。どちらかというと隣のムトーちゃんのクラスの方が多いし、それと同じくらいのクラスが4つくらいある。


「どういう事なのか結論は出てるの」


究は黙ったまま表示を換える。縦3段、横5列のマスにそれぞれ学年と組が表示されている。


「日付毎に被害届を出した組と件数を表示する。数字では分かりにくいだろうから、赤色を段階毎に濃くするようにした。それじゃいくぞ」


究はエンターキーを押した。

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