第35話 その2

「ビトーちゃんが狙われた?」


 あのあと予鈴が鳴ったので、ムトーちゃんは教室に戻りうやむやとなり、授業後の休憩時間に廊下で先程の騒動の顛末を2人に聞く。


「昼休みに…、ムトーちゃんと一緒にお昼を食べて教室に戻ったら…、男子がスカートをめくりに来たの…」


うつ向きスカートをもじもじといじりながら、ビトーちゃんがそう言うと、ムトーちゃんが言葉を続ける。


「教室前で別れて戻ろうとしたら、ビトーちゃんの悲鳴が聴こえて、振り返ったら数名……、3人だったわ。2人がビトーちゃんを抑えて1人がスカートを捲ろうとしていたの。それでわたくしが手刀で彼らを叩きのめしてから、庇っていた時におふたりが戻ってきた次第です」


あたしとタカコは顔を見合わせて考える。どうしてそうなった?


「ビトーちゃんて、パンチラやってたっけ?」


「教室ではやってないです…」


「ん? じゃあどこでやっているの?」


あたしの質問に、ビトーちゃんと何故かムトーちゃんも顔を赤らめる。なんで?

あたしの疑問をよそにタカコが確認する。


「教室ではやっていないのね?」


ビトーちゃんが黙って頷くと、タカコが腕組みして考え込むと、口を開く。


「じゃあクラスうちでパンチラやってないのは、あげはとビトーちゃんの2人なんだ」


「それがどうしたの」


「ほら、前にビトーちゃんが言ってたじゃん。なんか男子があげはのスカートをめくる人が増えたって」


「ああ、そんな事言ってたわね」


「あたしも[パンチラファイト]やってたから分かるけど、クラスでやってないのは、あげはとビトーちゃんだけなの」


「え、ビトーちゃんもやってなかったっけ?」


「あたしは…、女子にめくられた事はあるけど…、自分からは…、ないよ…」


自分のことでいっぱいいっぱいだったから、気がつかなかったな。でもそれがどうしたんだろう。その事をタカコに訊くと意外な言葉が返ってきた。


「ビトーちゃんに言われてあたしも注意して観てたんだけど、クラスの他の女子は自分からパンチラしていて、男子にめくられるコはほとんどいないの。男子は黙って見ていて、喜んでいるばかりなんだけど、あげはにだけはめくりに来ているのよ」


なになになになになにぬねの!!


驚いて、ビトーちゃんに訊いてみると、そうだと言う。


いやたしかに、ここしばらく男子ばかり来ていたけど、女子が来ないのはタカコ達のおかげだと思っていたけど、そうじゃなかったんだ。


この時、あたしは、おそらくタカコもだけど、何か不自然なモノを感じた。だけどそれが何なのかは分からなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る