第30話 その4

「分析って」


「時系列でどの組で起きたかを調べるのよ、そうすれば1番最初に始まった組が分かるでしょ。ひとクラスに女子は20人程度、それなら見つけ出すのが簡単だから」


「しかしこれだけじゃ正確に欠くぞ。対比するデータも必要だ」


究の言葉に、カトーちゃんがイラつく。うるさいさっさとやれと言うと、究も正確に欠けると言い返す。これでは話がすすまない。とはいえ別のデータねぇ……。


「ああっ」


突然のあたしの大声に、2人はビックリして言い合いをやめて、こっちを向く。


「究、別のデータあるわ。生徒会の投書よ。あれなら対比データになるんじゃない」


それならなると言うが、どうやって手に入れるんだと返ってくる。


「あんた化学部の部長なんだから、生徒会に縁があるんでしょ」


「化学部とパンチラ捜査に、どんな因果関係があると説明するんだよ。個人情報扱いされたら、渡してくれないぞ」


あげ足ばかりとるんじゃないと、カトーちゃんが怒るが、究の言うことももっともだ。どうしよう。


「生徒会長とは顔見知りなの」


「そりゃ、委員会でも会うしな」


「なら、あたしが話をつけるわ。究は紹介だけして」


「あげは、どうするの」


カトーちゃんが心配そうに訊く。


「半分出たとこ勝負だけど、勝算はあるから任せて。究は昼休みに会長に会うように段取りつけといてね。あたしとタカコで行くからね」


あたしの勢いに気圧されたのか究は、ああとだけ返事をした。




 化学予備室を出ると教室に戻ろうとしたが、カトーちゃんが方向を変える。


「どうしたの」


「ごめん、保健室に行ってくるわ。マジで腹が痛くなってきた」


「大丈夫? なにか悪いものでも食べたの」


「あんたじゃあるまいし。マジで2日目なのよ、横になってくるね」


ああ、だからいつもよりイライラしていたのか。

普通ならお腹を押さえてゆっくり歩くところを、まるでモデルのように背筋を伸ばしてカツカツと歩いていく。やっぱりカトーちゃんは格好いいな。


 2時間目の授業中に戻り、休み時間に状況をタカコ達に話す。


「あたしも行くの」


頼まれたらイヤとは言わないのに、珍しく遠慮気味な顔をされた。

 拝み倒して、昼休みに究と3人で生徒会室に向かった。


「失礼します」


中には4人の男女がいた。 手前の会議用テーブルに男女1名ずつ。奥の偉そうな机に男がひとり、その傍らに女がひとり立っている。おそらく会長と副会長だろう。


「青草化学部部長、話というのはなにかね」


何かの書類に目を通しながら、事務的に訊いてくる会長に、究のかわりにあたしが答えた。


「2年3組の紅です。用があるのはあたしです」

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