第29話 その3

「どゆこと」


「ずり下げ1年坊主は見つからない、替え玉はイヤだ。それならパンチラブームの火付け役を晒し者にして、全校に知らしめて、ブームを終わらせるの」


「なるほど」


「ついでに、くそオヤジの前で謝らせれば、満足するんじゃない」


「で、はっちゃんも転校せずに済むと。良いんじゃないそれ」


「問題は火付け役を見つけ出す、という事なんだけど」


「それだと女子になるから、あたし達の誰かが人身御供になれば、手っ取り早いんじゃない」


「誰がなるのよ」


「あたしは顔バレしているし、ムトーちゃん、ビトーちゃんも駄目ね。となるとカトーちゃんが……」


「なんであたしが、縁もゆかりもない下級生の為に、やらなくちゃいけないのよ」


さっき自分で提案したじゃない、ワガママだなあ、もう。


「となると……」


あたしとカトーちゃんは、タカコを見る。が、やめとくことにした。

なぜならタカコなら、間違いなく引き受けるだろうからだ。そしてあっけらかんとして、その後も何事もなく付き合ってくれるだろう。

だがあたし達には気まずい雰囲気にさいなまれて、居たたまれなくなる。

タカコとはそんな関係になりたくない。だからやめることにした。


「ずり下げ坊主と火付け役を探そう、面倒だけどその方がいい」


あたしはそれに同意した。


「となると、あげは、青草のバカは授業に出ているの」


あたしはスマホを取り出し、窓から南校舎の化学予備室の方に向けると、カメラアプリを起動してズームアップする。

入り口のすりガラス越しに人影がみえる。どうやら居るようだ。

その事をカトーちゃんに話すと、突然立ち上がり、


「サトーちゃん、あたし今生理なの。2日目でツライからあげはに保健室まで付いてってもらうね」


そう言うと、あたしの腕を取り教室から出ていく。


「ちょ、ちょ、ちょっとカトーちゃん、どうしたの」


「とっととこの件をかたづけるのよ」


 あたし達は究のいる化学予備室に着くと、究に現状を話した。


「それで僕に何のようだ」


珍しくつっけんどんな感じで聞き返してくる。どうやらコーヒーがまずいと言われたことを、根に持っているようだ。

しかしカトーちゃんはそんなことお構いなく、究のパソコンに自分のスマホを繋げて操作し始めた。


「お、おい」


究がとめるのも聞かず、プリンターから大量の資料を印刷する。


「カトーちゃん、何してるの」


印刷されたプリントをまとめると、究の前に置いた。


「あたしのメールグループにパンチラの現状を問い合わせたの。これはその返事。青草、あんたこれを分析しなさい」

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