第27話 臭くないわよ、ちゃんとするから

「あげはー、そろそろ起きなさーい」


階下したからお母さんの声が呼ぶのを、半分夢の中できいていた。


あー、朝かー


……


……


えっ、あさ!!


ガバッと、起き上がり、一気に目が覚めた。

となりを見ると、さんごちゃんはもういない。きれいに布団はたたまれていた。

あわてて下に降りると、お母さんが朝食とお弁当の用意をしている。


「ごめん、寝坊しちゃった。さんごちゃんは? 」


「もう出かけたわよ、5時くらいに起きてきたかな。おかげでコッチも早起きしちゃったわ。それより早く用意しなさい」


「ごめん。たてはとしじみは? 」


ちらとテレビの左上端にある時刻を確認すると、そろそろ起こす時間だった。

2人を起こしに行くと同時に、自分も着替える。

慌ただしくも、いつも通りの時間に朝食を食べることが出来た。


「お父さん、スーツは大丈夫? 」


「衣替えしたからね、今日から夏用だよ」


「お母さんも衣替え? 」


「まあね。ちなみにさんごもよ」


だから大荷物だったのか。大人と子供では衣替えの間隔が違うのかな。


いつも通り、たては以外が出かけるのを見送り、後片付けしてから一緒に出かける。

少々足早に進んだから、たてはが文句を言うが、こっちはこっちで都合がある。

集団登校の場所まで送ると、今度はダッシュで学校に向かう。


「お待たせタカコ」


出かける前に連絡しておいたタカコと、待ち合わせる。一緒に登校しながら昨日の話を訊きたかったからだ。


「で、サクラチルってどういうこと? うまくいかなかったのは判るけど」


「生徒会に行ったんだけどね、あまり本気にされなかったのよ。すでに投書があって知ってはいたけど、問題視してなかったんですって。それより大事にするなと釘を刺されたわ」


「はっちゃんの事は言ったの」


「言ったわ。[そんなことで大騒ぎしている保護者が間違っている、転校したければすればいい]だって」


くそっ、と思いながら親指を噛んだ。


やはり臭い物に蓋をする流れになったか。生徒の事より自分達の内申書の方が大事ということなのだろう。腹は立つが、今はそれどころじゃない。次の手を考えなくては。


学校に着くと、相変わらずチラ見せをあちこちでやっていた。

こんな状況じゃ、もうスカートめくりはしません、なんて言っても信じられないだろうな。大声でやめろよと叫びたくなる。


「ごめんあげは、力になれなくて」


「タカコのせいじゃないよ」


「でも、すごい顔しているよ」


言われて我を取り戻し、深呼吸した。落ち着けあたし、短気は損気だぞ。

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